11月16日

socotsu
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朝からあれこれそっちのけで、もうすぐ編み終わりそうなバラクラバにとりかかってしまう。編みものと読書の時間をうまく配分する方法見つけたり、などとわかった口をたたいていた自分はどこへ。私は棒針をくわえて走るいきものです。走れば走るほど加速するけど、多分どこかで息切れするはず。

編みかけの白いバラクラバがソファの上に置いてある

あともう少しのところまできたために、外出の準備をするぎりぎりまでとじはぎに注力してしまった。ほんとうにもう少しで完成する状態で、後ろ髪を引かれながら家を出た。

目的地は先週ぶりのワインとパンのお店のサンドイッチ。サーモンのオープンサンドが新たに加わっていて、悩みつつ新メニューと先週と同じパンドミのサンドを選択。

サーモンのオープンサンドが白い皿の上にのせられている サンドの上にはサーモンの間にディル、ケッパーが散らされ、そばにはレモンのくし切り

クリームチーズの下のバジルペーストが味の決め手なのかもしれない、濃厚だけれど飽きのこないおいしさ。しかしペースを誤ったのか、いつもよりアルコールを摂取したくなる味だったからなのか、先にワインを飲み干してしまってお酒を追加したくなった(しなかったけどパートナーに一口もらった)。

昼食後、そういえば気になっていたイベント、同じ路線でいけるのでは?と気づき、急遽世田谷文学館のイベントへ。柚木麻子さんがフリーマーケットに参加&ステージに上がると聞き向かったものの、混雑する会場内で該当スペースがわからなくなり、うろうろとさまよう。中央な作家さんたちのスペースか、と遅れて気づき、ぶじ発見した『のどZINEまん』を買おうとして立ち止まって見つめていたところ、スペースにいた人にZINEを熱心に売り込まれた。そばにいた人からのその人への呼びかけの内容から察するに朝井リョウさんで、そうかこのイベントに参加するからか、と納得しかけたけれど、よくよくまわりを見渡すと、なんとなく一方的に見知った顔(文筆業界)がちらほら見えてきだしてこのイベントはいったい、とじわじわとおもしろさがこみあげてくる。

のどZINEまんとタイトルが手書きで書かれている 柚木麻子さん発行のZINE

しばらくして始まった柚木さん・朝井さん・でか美ちゃんさんのステージは、柚木さんがたいへん楽しそうにモーニング娘。や、あややの歌を歌い踊っており、正直歌声自体は、これが歌の先生にあなたは今まで歌っているだけではなく歌に合わせて大声で歌詞を叫んでいるだけ(ZINEより意訳)と言わせるラインから上達後の?!と驚きを隠せないもの(ひどい言いよう)だったのだけれど、あまりに堂々とした姿に元気が出た。視覚的にいちばん目を奪われたのは朝井リョウさんのダンスで、文キャンでどうやって時を過ごしたらあのようなキレッキレのダンスを踊れるような人生が歩めるのか、それは私にも今からでもできますか?と心の中で語りかけそうになった。

イベントを観覧し終えた後は寺山修司のコレクション展とムットーニをみて帰ろうと思っていたのだが、ムットーニの上演がちょうど終わったタイミングだったこと、無料開放日だったことから、思いがけず2階の森薫と入江亜季展も鑑賞することに。漫画の原画展というものに実はそこまで興味を持てず、時間的にもじっくり一枚一枚を鑑賞というふうにはいかなかったものの、私がいうまでもないことだけれどお二人とも本当に絵がうまくて感嘆。特に入江亜季の絵は、読んだことがある漫画家の中で一番好きだし一番上手いと思っているのだけれど、女性の身体の扱いがあまりにもフェチズムに寄っていて、女体をモノ化する目線が要所要所ににじんおり、絵がうまいだけにそれがことさらきつく(個人的に森薫の方がまだ女性の主体的な意思を感じられる)、しかし一方で旧来の漫画表現に慣らされ、それを当然のものとして受け止めていたころにしみついてしまった習慣としてどうしようもなく惹かれてしまう時もあり、そうした心の動きが発生するコンテンツから意識的に距離をとった方がいいなと、現在連載しているタイトルの2巻あたりから読むのをやめてしまった。しかし今回ひさびさに目にし、やっぱり絵自体はとても好きだと再確認したし、『こだまの谷』や『群青学舎』までならまだ…と思ったが、『群青学舎』は短編によりかなりテイストが違うので、個別に見るとすでにかなりあやういとは思う。

見てあれこれ考えている間にムットーニの上演時間となり、1階に戻り着席。この小さい箱のなかをたくさんの大人が真剣に目を凝らして見つめているという構図のおもしろさを毎回思う。童心に戻って、というタイプの作品ではないのだが。いちばんの目当ては以前八王子の夢美術館で見た『サーカス』だったのだけど、個人蔵の『ラジオ・ノアール』がムットーニの毒とはなやかさ、ゆかいさの配分がちょうど良い作品でかなり好きだった。低音が響くかっこいい声で顔だけラジオの箱から覗かせ歌い出した骸骨が、じつはおなかにミラーボールがはまっている展開よ。まあ女体のモノ化について上階の展示を指摘するならムットーニのそれも逃れられなくはあるのだけれど。逆さになる空中ブランコ乗りにスカートをはかせる選択についてはやっぱり何度見ても考え込む。しかしセットの手前の造形物の動きだけでなく、後ろに紗を透かしてぼわっと浮かび上がる豪華客船やゆらゆら揺れるパラシュートもまたこの作品群の魅力であることを再確認する機会にもなった。そこにあってないものが亡霊のように浮かび上がり、そのたびに同じことを繰り返す、という構造にも惹かれている。

帰り道にひさびさに近くのケーキ屋さんに立ち寄り、散々悩んで4人分はあろう小ぶりのタルト一台とブラウニー(という名のブラックサンダー形のチョコレートのお菓子)、それから明日実家に持って行くお土産をやや憂鬱な気持ちになりながら買う。ご近所と思しき親御さんと小さい子がケーキをたくさん買い込んでいて、紙箱が入れられた紙袋を小さい子が持って歩きたいと言い張り、かなりほほえましい空気が漂っていたが、お店の方はプロ意識が非常に高いと見え、奥から別にお店の名前入りビニール袋(空)を持ってきて、お手伝いはこれでしてね、と小さい子に握らせていた。

帰宅後、帰り道で買ったおにぎりを3つを分け合い、パートナーがさっと作った海藻と木綿豆腐入りの味噌汁と合わせて軽い晩ごはんにしたのはタルトをカットして食べる気まんまんだったから。

グレープフルーツとピスタチオのタルト一台 ピンクグレープフルーツと普通のグレープフルーツが交互に上部に敷き詰められているタルト

先に口に入れたパートナーの感動の声に後押しされて1/4に切ったタルトを鷲掴みしてかじる。まったく甘くない酸味のあるフルーツの下に濃厚なピスタチオという組み合わせがとても好みだった。クリスマスにケーキをまったく買う予定がないんだけれど、ホールを2人で分け合うならこのようなタルト台のものが自分たちには合っているのかも、と話し合う。ヴィランのタルトタタン、そういえばもう今年は売り出されているのだろうか。

首で結ぶ紐付きバラクラバを絨毯の上に側面が上になるよう置いている 白い毛糸で編んだもの

食事後にせかされるようにもう少しのとじはぎを終え、ぶじ完成したバラクラバ、やっぱりあまりにもロマンチックなテイストのかわいさで、これを照れずに被ることはできるのか。しかしかなりべんりなかたちなので暗めの糸でもう一枚編みたい。パートナーが衣替えとあわせて普段棚の上にあげている箱をおろしてくれたので中身を見たところ、無くしたと思ったシェルポーチのキットやヤク糸、ヤク糸といっしょに買ったパターンが出てきて驚きと喜びの歓声をあげた。

たぶん3〜4年寝かせている(あいだの数年はパターンをなくして糸をどうしようと悩んでいた)のだけど今季がそのときか?

@socotsu
そこそこ