9月25日

socotsu
·
公開:2024/9/26

今週は土曜日まで仕事という事実に果てしなさを感じていたけれど、並行して準備しているイベントのあれこれの締め切りが結構ぎりぎりかもしれないことに気づき、土曜まであってよかった状態になっている。

夜は本屋を2店はしご。1店目は蟹ブックス。友人から借りてなくしてしまった本を買う算段だったのだけど、そういうこともあるだろうとうっすら思いつつも、目当ての本が見つからない。売り切れかもと思いながら、この日をめがけて行ったのでこの方はたぶんそう…と思いながら、お店の方に在庫を尋ねたところ、一緒に本棚にないか探してくださったがやはり見つからなかった。その方が確認していた棚を見ながら、やっぱり置くならこのあたりだよね、と自分が目星をつけていた場所が誤っていなかったことを再確認。そしてこの本の著者なんですが、と切り出され、やっぱり間違っていなかったと思いながら、新刊よかったです、と感想を伝えた。感想と言ってもよかったですという一言だけで、こういう時にすらすらと言葉が出てくる人間になりたいけど、もごもごしているのが常、むしろ突然喋りすぎて相手を困惑させるよりよかった、と思いながら、おすすめいただいた別の日記ZINEとウルフ『月曜か火曜』、友人にすすめる本を一冊買った。

そした映画『成功したオタク』の書籍版(完全にイコールの内容ではないが)、『成功したオタク日記』のリーディングパーティーに参加するため、2店目のOH MY BOOKS! へ。店主の方が以前お店を訪ねたときのことを覚えていてくださってちょっとうれしい。じつはこれと決められた一冊の感想を話し合うタイプの読書会って初めてで、非常に緊張しながらお店に向かったのだけれど、友達の部屋に招かれたような、よい意味でこじんまりとした空間での少人数での会だったこと、店主の方が冒頭に、他者の意見を否定しないことをきちんと注意事項としてあげていたり(だいたいの読書会での共通ルールかもしれない)気さくに話を振ってくださったのもあり、くつろいだ雰囲気で話をする&聞くことができた。テーマがテーマなので作中で気になったエピソードと合わせて「推し」に関する体験を個人個人がそれぞれの言葉で語る中(当日お店のアカウントのストーリーでPodcast「夜ふかしの読み明かし」の哲学対話のルール「偉い人の言葉を借りない」をリーディングパーティーでも必要なことでは?とシェアされているのを見てうれしくなっていた)、語っている内容へのストレートな共感や、なんとなく想像がつくようなシチュエーションにひりつくような想いに駆られるポイントも多数あったけれど、なんらかの現実のつらい体験を発端として、せき立てられるように、救いを求めるようにこの本を手に取った人が集ってここでそれぞれの想いを語っている、という状況はこの本を読んだ(映画を見た)人がとる行動としてとても理想的に思え、でもまったくすっきりとしてはいないごちゃっとした感情の存在を再確認するかさぶたはがしとも言えそうで、自分も一当事者として崩れながら困ったように笑うしかないなあ、と心の中でおかしみとかなしみが煮え立った鍋をぐるぐると永遠にかき混ぜていた。p.197の「そして人間というのは完璧ではありませんよね。だからスターに完璧な人間であることを求めるのがかわいそうです。」が基本スタンスであり、悔い改めた人には再度チャンスを与え絶えずてもいいのでは?でも復帰コンサートのチケットを取ってしまったことを人に気軽に言えない後ろめたさはある、という人や、自分の好きなグループのメンバーが犯罪を犯してから曲が聴けなくなってしまった、今も立ち止まっている、という人、好きでやっているファン活動なのに苦しさが強いときも多い、と吐露する人、人の数だけそれぞれの立ち位置の話がある。この会に出席していた映画の配給会社の方が最後に、作中でのファン友だちと話し続けることの大切さに触れられていて、なんかもう話すしかない、同じ場所をぐるぐるとまわり続けるような会話でも今はこの話を心を許せる人だけがいる場所で話し続けてしまう、と思い詰めているこの頃の自分にとっては、やっぱりその言葉に救われてしまうような、でも簡単に安らいではいけないような気持ちに。しかしこうやって、近い気持ちを共有しているけどこの会一回こっきりの関係性、というあとくされがない、という場面だから楽に話せる、ということもあるとは思う。

K-POP以外のファンの人もいるのでは?と想像していたら自分以外は全員K-POPファンで、ひとりで謎のポジションの人になっていたけど、知らないゆえの立ち位置で質問をしたりできたのもそれはそれで会の進行としてよかったのではないか、というポジティブな発想をしている。

今パラパラと本をめくっていたら改めて話したかったことがたくさんまだまだあり、個人的にはp.256からはじまる「ソウルに向かう列車で過ごした時間」の、「推しに会いにいく」までの移動手段、過ごし方、また「推し」への手紙を書くという行為について話せばよかったかもと思った。

車窓のまぶしい風景が目に沁みてくる頃、バッグから日記帳を取り出す。ペンを手に文章に集中するうちに、列車の座席はわたしだけの小さな部屋になる。誰にも話しかけられない、誰にも邪魔されない、大切な空間。一瞬のひらめきや思いを記録するのは、ひとつの楽しみだった。時には日記帳ではなく便箋を取り出すことも。手紙を書く相手は、いつもあの人だった。

日記や手紙を書き終えると、きまってスマートフォンをチェックした。実際のところ、推し活をする時間の8割はスマホを覗いている。

p.258

たいていの場合、わたしは移動時間をほぼすべて寝て過ごすため、車窓の旅を楽しむという時間の使い方はしていなかったし、手紙も立ったまま書く(なぜこんな過酷なことをする必要があるのか、知っている人は知っている)ことが多かったけれど。

時間がなくて話題に取り上げられなかった副読本『エトセトラ』VOL.8 「アイドル、労働、リップ」は、読んだつもりでずっと積んでいたようで、今回のことがきっかけにならなければずっと本棚で眠らせていたかもしれない。ありがたい。まだアイドルを心の拠り所にしている人、アイドルだった人、いまはもう誰かを「推す」ことはできないという人、いろいろな人の声が響いていて、それらの記事の中でも「働くすべての人の「労働」が守られるために知りたいこと」での以下の説明は、宝塚歌劇団のなかで働いている人、ファンでいる人たち、知ってる人ももちろんいるだろうけど、知らない人たちに届いて、という気持ちで叫び出しそうになりながら読んだ。

業務委託契約とされていたとしても、就労の実態によって、労働者と認められることはあります。労働基準監督署(労基署)から労働者だと認められれば、労災保険の給付が行われます。労基署で認められない場合でも、裁判所に訴え、労働者だったと認められて補償金が支払われるケースもあります。

この本が出たのは2022年、そして先日のニュースはこれ。

帰りに蟹ブックスになかった本を発見し、無事購入!

スキーのリフトやスキーをしている人の写真がプリントされたカバーがかかった本

今回の読書会は今回のものとしてとてもよかったけれど、本に紐つく自分の体験を語る部分が大きかった(その行為を後押しするような内容の本でもあるので)ので、もっと本の感想を深める寄りの読書会にも参加してみたい。

@socotsu
そこそこ/日記のタイトルは川柳