実家の犬

socotsu
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数年前によその家から突然実家にもらわれてきた犬はあまりにちいちゃく軽く、私のような時々やってくる謎メンバーにもおだやかに接してくれる。先日の帰省では膝の上に乗ったこのちいちゃい生き物の顎〜耳の下を数十分掻きながら、こんなにいとけなく見えるけれど、私より人間に換算した年齢は上で、そしてこれ以上は大きくならないのだよな、という事実と向き合い、途方に暮れていた。あまりにもはかない存在を自分の懐に招き入れることにひるんでしまう。この犬は、実家の犬でわたしの犬ではない。だから大丈夫。と心の中でとなえながら、本当に? もうすでに関わってしまった、と取り返しがつかないことをした気分になる。

自分が小さいころ、なにかこの手の生き物を飼いたいとは言い出さなかったなと思い返しつつ、あのころはさておき、いまはその責任の重みが具体的なものとして想像できるようになった。想像はできるけれど、本当に背負い込んでいる人ほどにはやっぱりわかっていないのだと思う。遠くから幸せを願うのが性に合っている。

法事に訪れた親族のうちのひとりがこの犬が苦手らしく、それならもううちに来てもらわなくてもいい!と怒っていたらしい父の剣幕にびっくりしたと、母は笑いながら教えてくれたけれど、私はそれを聞いたとき、普段はやれやれと距離をとりたくなる父の感情の揺れに寄り添ってしまいたくなった。まわりにいる人みなに大事にされていてほしい。

次会うときまで元気でね、と祈っている。

@socotsu
そこそこ