「ユンヒへ」を見た流れで、併せて紹介されていた方がいたので「本当に遠い所」を見たのだが、素晴らしい秀作であると同時に、こんなにキツい映画なら事前情報が欲しかった…というのが正直なところ。
江原道の秋、田舎の牧場、静かな村の風景…胸が痛くなるほど美しい情景の中で、静かに無駄なく描かれる人間ドラマ。セリフではなく、わずかな目線の動きや、仕草、無言のスキンシップなどで主人公のゲイカップルや、周囲の人物の思いがひしひしと伝わってくる。
ただ、それだけに後半の展開が辛い。クローゼットのレズビアンであり、田舎に住んだ経験もある私にとっては身に覚えのあるマイクロアグレッションの連続で、正視するには苦しかった。
私は立場的には詩人の恋人の方に近く、こういうやり取りで無闇に傷ついたり、人の噂にヒヤリとしたりという経験がやはりあるので、フィクションとして対象化して楽しむにはそもそも無理があった。
誰かをただ好きでいること、共にありたいと願うこと、社会の中でごく普通に生きていくことのむずかしさ。異性カップルでも時に直面するハードルが、最初から高々と目の前にある。どうすることもできないまま、居場所を追われていく主人公が痛々しく、悲しかった。
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牧場を舞台にした時に、必ず出産シーンでお茶を濁そうとする傾向、どうかと思う。