いつか会える私たちの犬に

clove
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SNSでしか知らない犬の訃報が続く。毎日楽しみに写真を見るだけの、飼い主さんが紹介されるエピソードを読むだけの犬。もちろん、会ったことも、触ったこともない犬。でも私は確実にその子たちを好きだったし、いなくなってしまったことがとても悲しい。

私たちの家族だった犬は、あっちに行ってもう20年以上になる。何が混ざっているのかわからない茶色の中型の雑種犬で、とてもとても賢かった。後年になって耳が聞こえづらくなってから格段に意思疎通ができなくなり、犬がどれほど言葉を理解できていたのかがよくわかったほどに。

食べることとと散歩が好きで、みんなと一緒が好きで。どこにでもいるような、取り立てた特徴のない犬だったけど、私たちには素晴らしい存在だった。崩壊寸前の夫婦が運営している家庭がなんとか維持できていたのは、確実に犬のおかげだった。

長い月日が過ぎても、家族の間ではちょくちょく犬の話をする。ハンバーガーの包み紙を拾い食いするほどの食いしん坊で、大好物はチーズ。気が向かなければ名前を呼んでも来ないのに、「チーズあげるよ」というと走って来ていたこと。ご飯が予定より遅れると、怒られないように庭の方を向いて吠えて催促していたこと。

今ごろ犬はあっちで、毎日ほしいだけのチーズを食べ、好きなだけ色んな匂いを嗅いで、気ままに歩いているんだろう。もしかして、時折、私たち家族のことを思い出しては、考え深そうな顔をあげて佇んだりしているんだろうか。

待っていてくれ、大好きな茶色い犬よ。必ずみんなそこに行くから。

その時はいつもみたいに、たくさん尻尾を振って走って迎えに来てくれ。

@someorikukuri
ライターです。文学、アート、ジェンダー、フェミニズム、テキスタイルなど。