(微ネタバレ)ゲーム感想文「未解決事件は終わらせないといけないから」

sonicsan
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公開:2024/8/17

「記憶」をテーマにした推理アドベンチャーゲーム。

オタクは老いるに従って、アニメを見るのもゲームを起動するのも面倒くさくなっていくという。僕もご多分に漏れず、アクションゲームやRPGをプレイするのは年々困難になっており、近年はプレイ時間の短いミステリADVぐらいしかクリアできなくなっている。「パラノマサイト」とか「ファミレスを享受せよ」とか、そして本作とかである。

ちなみにこれは韓国のゲームなのだけど、登場人物の名前がすべて日本人にローカライズされており、すんなり違和感なくプレイすることができた。

個人的に、こういった登場人物名のローカライズにはあまり賛成していなかったのだが、これが登場人物全員韓国名とかだったら、キャラ名覚えることに脳のリソースが割かれてしまい、没入度が下がっていたかなと思う。

さて。

ミステリ作品のネタバレは万死に値するわけだが、特に叙述トリック系の作品は「叙述トリックものである」という情報すらけっこうなネタバレになる。

本作の場合はどうだろうか。ゲームの構造自体はプレイを始めてわりとすぐに気付けると思うが、つまり「叙述トリックであることを最初に提示した上で進める推理ゲーム」という感じかなと思う。ちょっと説明が難しいが、まあ書いてみよう。

主人公の女性は、引退した元警察官である。十数年前にとある児童失踪事件を担当したもの、未解決のままに終わっており、そのことが彼女を今でも苦しめている。

主人公は今は認知症を患って老人養護施設のようなところにいるのだが、そこに若い女性警察官が訪ねてくるところから、本作は始まる。いや、認知症とまでは明言されてなかったかもしれないな。どうだっけ?

とにかく、この主人公の記憶は断片化されており、かつて自分が担当した児童失踪事件についても、後悔の念は強く残っているものの、具体的な事実関係については多くを忘れてしまっている。

そんな彼女が、若い女性警察官の助けを借りつつ、断片的な記憶の中に出てきた人名やキーワードを手がかりに事件の全体像を思い出していくことで、「未解決事件を終わらせる」ことが、ゲームの目的となる。

プレイヤーは断片化された記憶のかけらを、「この会話はAさんとの会話だと思ってたけど実はBさんとの会話なんじゃないか?」「この会話はもしかしたら時系列もっと昔なんじゃないか?」などと推理しながら、パズルのように並び替え、徐々に真相に迫っていくことになる。

ここで叙述トリック要素だが、序盤のパズルのピースが少ない時点で想像していた事件が、記憶を思い出すたびに全然違う物語に変わっていくのである。

これが本作の最大の面白さで、新たなピースを手に入れることで、当初の「これ、絶対Aさんとの会話だろ」「CさんはDさんの奥さんだよな?」といった先入観がどんどん破壊され、「あ!この発言、この人だったんじゃないか!?」と、当初見えていたのとは全く違うストーリーができあがっていくのである。面白そうでしょ?

また、今どきのゲームの必須要素である「実績」も、本作においては非常に重要な役割を担う。僕はいつもなら実績とかどうでもいいタイプのものぐさゲーマーなのだが、今回ばかりは「実績解除してよかった……!」と心の底から思ったものである。初回クリアだけでは物語の全貌は見えていなかったのだ。

最後の実績を解除し、二度目のエンディングを見ながら、ちょっと泣きそうになってしまった。なんで泣きそうになったかを書くとこれもまたネタバレになるので、やっぱりミステリ系の感想は難しいなぁ。とにかく良いゲーム体験だった。優しい世界。

あと、主人公が警察官ということもあり、漫画の「ハコヅメ」を思い出させるところもあった。100点。