ダニー・ハサウェイ「ライヴ」

sonicsan
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公開:2024/7/25

我が家の食卓にはAppleの第1世代HomePodがペアで置いてあり、食事どきや家事の間などに妻がいろんな音楽を流している。

僕は気になる曲があると「これは誰?」といちいち妻に訊く。以前に訊いた名前を忘れて繰り返し「これ誰だっけ?」と訊いてしまうこともあるが、妻はいちいち教えてくれる。妻が席を外しているときはShazamに訊く。Shazamも辛抱強く教えてくれる。

それでダニー・ハサウェイの「ライヴ」だが、食事どきに流れているのを聴き、あまりの良さに「これは誰?」と妻に訊いたらこの作品だった。いや本当にすごい。こんなすごいライブ盤はなかなかないだろう。特に、ある曲での長尺のベースソロが素晴らしかった。

あまりにもよかったので後でWikipediaで調べたら、ベーシストの名はウィリー・ウィークス。アメリカの有名なセッションプレイヤーで、長いことクラプトンのバンドでも常時メンバーとして活動しているらしい。あと軽井沢に住んでいるらしい。

ところで、僕は結婚するまで音楽といえばロックばかりで、それもわりと青春時代である90~00年代ぐらいで更新が止まっており、ロック以外はせいぜいポップス、フォーク、アニソン、ゲーソンみたいな感じで生きてきた。

妻はロックも僕より詳しいぐらいなのだが、ジャズ、ソウル、ヒップホップ、R&Bなどブラックミュージックも好きで、そういう音楽がHomePodから溢れて日常生活を満たすようになると、知らなかった世界がどんどん広がり、自分の中の音楽熱も年々高まってきた。

人間は自分の興味のあるもの以外は、視界に入っても「見えていない」という。だけどあるものに興味を持った途端に、世界がそれについての情報に溢れかえっていることに気づいてびっくりする。これはつまり、自分の見える世界の解像度が上がるみたいな話かと思う。

例えば僕は「自動車」というものに対する興味がゼロの人生だったが、妻が自動車に詳しいため、二人で出かけた際に道行く車が話題になる。すると、これまで「見えていなかった」自動車が徐々に視界に入るようになってきた。

こうして見ると、いろんなかたちの車があるなあとか、あれはトヨタのエンブレムだな、たしかにトヨタ車多いけど思ったより道行く車のメーカーはバラバラなんだなとか、僕の知っている形のセダンってもうないんだなとか。

車なんてものは、人間が道を歩いていれば無限に視界に入るはずなのだが、興味がゼロのうちは「見えていなかった」のである。とはいえまだまだぼんやりした景色なのであるが、世のカーマニアの目には車道の風景がものすごく鮮明に見えているのだろう。

あと興味がなさすぎて車のデザインに好きも嫌いもなかったのだが、「ヘッドライトが丸くてレトロっぽいクルマ」が好きなことがわかった。ミニとかフィアットとかである。ミニは、そこそこ遭遇する。見かけるとちょっと嬉しい。ほとんどの車のヘッドライトはヱヴァンゲリヲンというか、アニメに出てくる吊り目のロボットみたいな顔つきである。きっと何か合理的な理由があるのだろう。

と、このように世界の解像度が上がるのは楽しいので、知識欲が高まり、最近はありとあらゆる本を買いまくっている。さすがに買いすぎた。例えば金利について学べば、経済ニュースから今よりいろんなことが感じ取れるようになるはずだ。

とりとめがないので話を戻すが、ダニー・ハサウェイの「ライヴ」を聴いてるときに、「昔ならこの音楽に興味を持たなかったかもなあ」と思ったのであった。そもそも、聴く機会自体がなかったんじゃないだろうか。

人生も残りどれだけ残っているかわからないが、できるだけたくさんの音楽を聴き、たくさんの本を読み、少しずつ世界の解像度を上げていきたい。

それにしてもウィリー・ウィークス、いいね!ウィリー・ウィークス起点でいろいろ聴いてみるのもアリかもしれない。ただ、ウィキペディアの「ライヴ」の記事の以下の記述は衝撃だった。ベースソロのみ!?そんなのありか?

アルバムの前半(LPのサイド1)には、1971年8月28日と29日にハリウッドのトルバドールで行われた公演からの抜粋が収録され、後半(サイド2)には10月27日から29日にニューヨークのビター・エンドで行われた公演から抜粋された[4]。ただし、「エヴリシング・イズ・エヴリシング」は、ウィリー・ウィークスのベース・ソロのみトルバドール公演の演奏に差し替えられている[5]