先輩は言った。「は?ふつうに10周はするだろ」

sorasuke
·
公開:2025/3/18

先日、いつもなら絶対に見ない、というか避けていたチャンネルの動画をたまたまクリックしてしまった。

動画内で志願者の高校生はある分野の研究のために大学の入学金を出資を求めるのだが、審査する側の一人は学生に対しこう言った。

(英単語帳を覚えるのに)3ヶ月なんていらないと思うんすよ。2週間で英単語をもう全部覚えてこいと、一冊。それできなかったらもう終わりだよこの話は。

(https://youtu.be/gyl9SxOPUkg?feature=shared&t=2257)

志願者はこの時点で英単語帳一冊を覚えていなかった。

この学生にとって、単語帳一冊を終わらせるハードルは高いだろうし、高校に入りたての自分であれば、それは1年以上掛けて取り組むものと感じていただろう。

今断言すると、それはただの幻想である。

100%完璧に覚えられるかは別としても、1冊を2週間でこなすことは、とくに時間のある学生ならば覚悟さえあれば絶対にできる。現に私は、それが可能であると確信したときから複数回成功しているし、仮に今後受験生に舞い戻るとしても、必ずできる自信がある。

具体的な方法はいろいろある(例えば、https://www.youtube.com/watch?v=IYqNKDRl6Hs)のでやりたい人は探して試してもらうとして、ここで強調したいのは次のことだ。

凡人が思う当たり前とできる人が思う当たり前の間には、とてつもない断絶がある。

例えば以下は私の身近にあった実例だ。

  • 数千問の4択が並ぶ問題集を毎日一周する(1問1秒以内)

  • センター(共通一次)英語を10数分で終わらせる

  • 毎日20-40km走ってから出社

  • 毎日プログラミングしてゲームを作る

  • 毎日ビジネスアイデアを100個出す

ポイントは彼らにとってそれが当たり前の領域にあるということだ。いや、すぐにそれができるようになったわけではないのだろうが、彼らはそれが可能であることすらも当たり前に思っていた。

高校の頃、学校指定の某数学の問題集を使っていたのだが、先輩にこれ終わらせるの大変ですよねと言ったら、「は?ふつうに10周はするだろ」と一蹴された。

そのとき、ああ、すごい人ってのはもう当たり前のハードルがとんでもない位置にあるんだ、と膝を打った。先輩にとっては問題集なり参考書は二桁は周回するものらしい。その先輩は速読英単語という単語帳に登場する長文も全て毎日1周していた。翌年自分もそれに習ってリンガメタリカという単語帳で同じことをした。

高校では陸上部で中長距離を走っていた。毎日5km、長い日で10kmくらい走っていていて、とても苦しかった。高校を卒業し、ある強豪高校の練習メニューをネットで見たときに衝撃を受けた。シーズンで波があれど、毎日平均20km、長い日は40km以上は走っているという。恥ずかしながら、そんな距離、大学の陸上部の話だと思っていた。後年趣味でランニングをはじめ、20kmとも言わずとも毎日10km走るのは当たり前になった。

その高校の練習が現代科学から見た練習メニューとして本当に最適なのかはこの際どうでもよく、何度も強調したいことは、すごい人は我々が思っている量・スピードを遥かに超越した世界を当たり前だと思っているという点だ。

この心理的差異はあまりにも大きい。

そもそも私達は、その「彼らから見て遥か外界に位置する当たり前」がメンタルブロックを作っていたことにすら気づかない。村の湖しか見たことない人に、海の広さを伝えるのは難しい。

これまでその当たり前を見直していなければ、私は大学に進めなかったし、アメリカで就職することすらもできなかった。そもそも選択肢にあがっていなかっただろう。

すごい人は、そのすごい当たり前の世界観を幼少期から作り出し、その中で人生を歩んできた。凡人と途方もない差ができて当然だと思う。もうパラダイムレベルで体験してきた世界が違う。

所詮私達は当たり前が作り出す世界の住人である。今の自分がたどり着けない場所を目指すのならば、自分の世界が相対的虚構であることを自覚して、外界に触れ、自分の世界を再定義して、常に引っ越し続けるしかないのだろう。

私の文章力がまったく追いついていないので、どこまでこの重要性を伝えられたのかわからない。けれど、これを読んだ人に少しでも各人の当たり前を振り返るきっかけが与えられたならば嬉しい。

追記:

思い出したので書き足しておくと、この「できる人の当たり前」はあらゆる方向を指している。模試で全国1位とったことのある友人がいるのだが、彼は世界史の新しい単元の勉強になんと漫画を使用していた!私は本当に優秀の人は、大学レベルの学術書しか読まないのだと思っていたけれど、なんとそんな人も裾野の広い勉強をしていたのだ。思えば名著世界一流エンジニアの思考法でも基礎から時間をかけて理解していく重要性を説いていた。「ふつうこんな簡単なこと練習しないだろ」から「こんな量をこのスピードでできるわけないじゃん」まで、勝手な思い込みがその人が突出できない理由を作り出しているだと感じる。才能があるからそれが当たり前に思えるんだろうという指摘は、その発想自体が自身の当たり前に飲まれている証左なのかもしれない。

@sorasuke
気づいたらアメリカにいた