…今日の若い作家は、人間的信条の内面的葛藤という問題を忘れているのであります。ところが、この葛藤を措いては、良い作品を産み得るものは他にありません。というのは、それのみが書くに値するものであり、苦悩し汗を流すに値するものだからであります。
こないだのフォークナーのノーベル文学賞受賞時のスピーチより。これを読んだ瞬間、すごく救われた気がした
アイデンティティの喪失、生きるとは、人生の意味…昨年末に急に襲ってきた虚無感に、打ちひしがれそうになった。独りで川辺を歩いた。呼ばれている気はしなかったが、歩きたい気分ではあった。完璧な人生など有り得ない。しかしだとすれば、人類がこうして抱え込む悩みや苦しみは? 何のために?
そしてフォークナーのこの言葉で、少し謎は解けた。そうだ、人間とは悩む生き物なのだ。悩み、苦しみ、葛藤する。悩み苦しむ意味を求めていたけどそうではない、人間は葛藤するのだ、葛藤するからこそ人間なのだ。その苦悩を描き人を救うのが文学という光なのだ
フォークナーと、ドストエフスキー、トルストイ、チェーホフ、バルザック、スタンダール、ディケンズ、ヘミングウェイ、ガルシア・マルケス、夏目漱石、太宰治。私をここまで生かしてくれた、暗くて重い文章たち。それは葛藤を通して、人間の心、生きる意味を私に伝えてくれたのだ
心の葛藤を肯定する、それを胸に生きていこう