好きな映画監督を挙げろと言われたら、タルコフスキーか、ロメールか、ゴダールか…悩むところだけど、一番最初に名が挙がるということはこのタルコフスキーが一番好きなのかもしれない
潮が舞い子が舞い - 阿部共実が好きなのも、青春群像劇を描きながら随所随所にタルコフスキーの要素を(強引に)画にしているからだ
と言いつつ、映画の数を観るわけでないではないので寡作な監督ながらソラリス以前の3作は観ていなかった。なんか地味そうだし(本当に好きなんかよ)。でも俺たちの大須シネマさんが再度タルコフスキー特集をやってくれたので観に行った。タルコフスキー特集、年に一度は日本のどこかでやっている
軸となるドラマ部分はなんだか垢ぬけないし、劇伴はなんだかダサいし…と途中まではまあまあ微妙な気持ちだったんだけど、銃声と弾頭と光の中で舟で対岸に渡るときの緊迫感が凄すぎる。これは地獄の黙示録なのか? 後にストーカー・サクリファイスの不快感と不穏さを産み出すことになるタルコフスキー、そして、水面(ドニエプル河なのか)に反射する木々の美しさもまた彼以外に誰が撮れようか。初期作ながら彼の魅力が存分にフィルムに詰まった1作だった、観てよかった
そしてこの作品はロシアからドイツへの復讐、それを描くことで反戦を掲げた一作となっている。侵攻される痛みを知るはずのロシアは、ウクライナに同じ暴力を振るっている。愚かな人類…。それを思うと、今まさに観るべき作品の一つであることは間違いない