どうせ文章を書くなら、太宰ぐらい面白い文を書いてみたい。絶対ムリ!
数ヵ月前に手元の積読ストックがたまたま切れて、たまたまコーヒーと随筆 - 庄野雄治が本棚に会ったので読んだら一本目の太宰の畜犬談から面白すぎてクソワラタ。どの随筆(エッセイ)も面白いし最後の不良少年とキリストで太宰への追悼にも泣いてしまうのだが、とにかく出だしの太宰の存在感だ。太宰は人間失格・斜陽・グッドバイ辺りしか既読してなかったので、早速きりぎりすと津軽を買って読む。前者も面白かったが、とにかくこの津軽が良い。彼の作品でも一番好きになった
津軽への帰郷の足取りを書き留めた旅日記で、とにかく一文一文がユーモアで豊かだ。これぞ文豪! 普段はコミュ障でビクビクしてるクセに、酒飲んだら罵詈雑言の嵐、一晩明けたら自己嫌悪で死にたくなると、これぞ太宰! 愚痴と小心が交互に来るジェットコースターみたいな心理にグッと共感してしまう。これは共感していいやつか? 太宰本人ではないけど、道中のSさんの熱狂的な接待の長回しと太宰がヒイてるのにクソワロてまう。タランティーノみたいなシュールな笑い感ある
その他にも印象的なシーンや描写が満載で、太宰が芭蕉の古池や~の句を、蛙が飛び込む貧弱な音を余韻と解釈する場面が好きだ。解釈自体はこの当時でも真新しいものではないのかもしれないが、文章そのものが美しい。目に浮かぶ光景もそうだが、この文そのものが後の時代に現れるアンビエント、もしくは環境音楽の概念そのものだ!
そして話のオチとしては奇麗に終わりすぎてる幼少時代の記憶・女中との再会で〆る辺り、やっぱり太宰は何を書いてもサービス精神旺盛・骨までエンタメを体現したような作家なんだな、クズだけど
こんな美しさ絶対ムリ! なんだけど、文章を書くときはやはりこの津軽を思い出しながら向き合っている。大切な心の一冊となった