友人の1人が最近転職活動をはじめたらしい。現在の職場環境が一因らしいが、話を聞く限り「いざとなればあの人がやってくれるよね」の『あの人』ポジションになってしまった、というのが大きいようだ。
ここでいう『あの人』は人あたりが良くて有能で、人間関係に怠惰な人を指す。言い換えると ”できてない人に逐一説明するのは面倒だから自分でやったほうが早い。揉めるのも嫌だし” というタイプだ。こういうタイプはいずれ破滅に向かう。上司から見れば職場が円滑に回っているため貢献に気づかれにくく、周囲は「すごーい。流石!ありがとー」と能天気に面倒ごとを任せ始めるからだ。一度は「いやそれ、お前の仕事だよね?」と指摘したとして、相手がモタモタしていれば『あの人』は見かねて巻き取り始める。そうしているうち、周囲はそれが当然になって全ての負荷が『あの人』に向かう。『あの人』が耐えられなくなるまで。
今回の場合は耐えられなくなったので転職します、という感じらしい。後に残される職場は大変かもしれない。なんだか追放系なろう小説みたいだな、と思ったが、もっと適した作品があった。
千と千尋の神隠しだ。
釜爺のボイラー室に薬湯をもらいにいくシーン。ススワタリの仕事を半端に手伝った千をみて、周囲のススワタリは抱えた燃料をめいめいに放り去る。「あ、やってくれるの?じゃあこれも頼むわ」という具合である。
釜爺の言っていた「他人の仕事に中途半端に手を出すんじゃない」という言葉、クラフト界隈で起こりがちな素人参入による価格のダンピングとかそういう意図なのかと思っていたが、”職場内に事なかれ主義の巻き取り役がいると全体がサボり始める”とかそういうのもあるのかもしれない。今になってみればあの作品、仕事アニメとして含蓄が深すぎる。
友人本人は「もうこういうのやめるわ」と言っているので、次の職場ではきっとうまくやるだろう。いい転職先が見つかるよう祈っている。