Thisコミュニケーション

sou_aomi
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ここ数年楽しく更新を追っていた漫画「Thisコミュニケーション」の最終巻を読んだ。いやぁ、最後まで展開が読めない漫画で面白かった!

本作を雑に説明すると、『合理性のみを判断基準に生きる悪魔のような男が、不死身の少女達を使い潰し続けることで怪物に侵略された終末世界を生き残ろうとする話』だ。

主人公は超人的な合理主義者・デルウハ。コアな漫画好きの間では「悪魔」「最悪」「外道の代名詞」と名前が上がることも多い。元軍人で、世界が怪物に侵略される様を目の当たりにしつつも生き残り、《世界はもうダメかもしれないが、自分は最後の日まで3食飯を食って生きたい》という行動原理に従ってたどり着いた最後の人類生存圏で、不死身の少女達を指揮して怪物と戦うことになる。

人を超越したレベルの合理的な思考で行動するので、必要なら真摯に対応するし、情もかける。その代わり、他の方法よりも効率的であれば、嘘も脅しも殺しも一切の呵責なく成し遂げる。

ただ、悪魔のように合理的ではあるが、「合理の化身」ではないところが絶妙なキャラクター造形だと思う。デルウハは倫理的にアウトな内容でも、問題解決の最短ルートならRTAもかくやの速度で容赦無く駆け抜けていく。しかし致命的に運が悪く、かなりの頻度でポカミスをやらかしてボロを出す。その度に窮地に立たされ、場合によっては制裁を受け、それすら合理性全振りの立ち回りでどうにか切り抜けていく。

その様が、やっていることは最低の人殺しなのに妙にコミカルで、感情の置き所に困るタイプの笑いを誘う。

結果的にそれぞれの思惑のすれ違いがいい方向に作用し、少女達は人間として成長するし世界は救われるが、そこに至る過程が破茶滅茶で、倫理観0で、漫画として比類のない作品に仕上がっている。戦闘描写も心理描写も巧み、犯人視点ミステリ的な楽しみもある。しかし全く主人公に感情移入できない稀有な漫画だ。

ちょうど4巻分の無料公開が始まっているので、ぜひ多くの人に触れてもらいたい。

せっかくだし、この連休中に読み直して詳しい感想でも書こうかな。