パキポディウム・グラキリスを育てていた。ぽるんと丸いフォルムが印象的な、マダガスカル原産の植物だ。冬場は葉を落として休眠し、暖かくなったら新芽を出して成長する。
そろそろ春だし水やりを始めるか、とたっぷり水分を与えたのが良くなかったのか、休眠明けに外に出した日が、よりによって5月並みの陽気だったのがよくなかったのか。気づけば胴体がぶよぶよになってしまっていた。塊根植物によくある症状、根腐れだ。
祈るような気持ちで湿った鉢から引き抜き、根を切り落としてはみたが、中身はじゅぶりと溶けて湿布のような匂いがしている。株のずいぶん上の方まで痛みきっていて、手遅れなのは明らかだった。
種から7年ほど育てた株だった。新社会人になった2017年4月、慣れない東京の借り上げ社宅で種を蒔いた。5粒ほど入手した種から唯一芽吹いた株。大切に育てていたつもりだったが、案外あっけなく枯れるものだな、とどこか冷静に考えている自分がいる。そのことがショックだった。