・NHK出版 学びのきほん はみだしの人類学: ともに生きる方法/松村圭一郎
・居心地の悪い部屋 /ブライアン・エヴンソン アンナ・カヴァンほか 岸本佐知子訳
・哀れなるものたち [Kindle]/ アラスター・グレイ 高橋和久訳
・モンキー ビジネス 2008 Fall vol.3 サリンジャー号/柴田元幸訳
奇妙で後味悪い短編ばかり集めた『居心地の悪い部屋』。中でもルイス・ロビンソンの「潜水夫」はサスペンス映画を観てるような不穏さなのに、結果的にそれを外されるのがなんとも居心地悪いし、ジョイス・キャロル・オーツの「やあ!やってるかい!」もまた映像的で不条理なホラーじみて厭な感じ。ステイシー・レヴィーンの「ケーキ」も怖い。ケン・カルファスの「喜びと哀愁の野球トリビア・クイズ」は、つい自分もフットボールで同じような物語を妄想した。
『哀れなるものたち』はまず試し読みをしてから映画を観て、その後でまた原作小説を読んでみたんだった。どちらも面白かった。
原作では主要舞台がロンドンじゃなくグラスゴーなので、スコットランド目線の皮肉と諧謔と風刺たっぷり。ヨルゴス・ランティモス監督の映画ではそうもいかないだろうし、本は本ゆえに入れ子構造や文字や挿絵のギミックが肝だから、軸をずらして思い切りフィジカルに振り切ったのもわかるような。なにせ、映画での終わりからまた本編なんである。
あのベラはいたかもしれない、でもいなかった(ことにされた)かもしれない…というやるせなさ、いびつに歪んだ世界(帝国と植民地、みんな繋がってる)と人間作り直し!って映画以上にアツく感じたな。マーク・ラファロだけはそのまんまだった。原作読むと、映画版で創作したラストも少し違った意味に取れるかもしれない。愛の経済ですから…
実は1月中に読み終わってた『はみだしの人類学』は、Zineマーケットで知人から買った古本だ。大変わかりやすく丁寧な人類学入門だった。そして、ここにも帝国と植民地の構造が大いに関わってる。
やっぱ世界作り直し!人間やり直し!と、人類に絶望しがちでタコの方がいいや…なんて思っちゃう自分である。
で、今はサリンジャーを久々に読んでるところ(いや、「ナイン・ストーリーズ」は昔読んだはずなのに忘れてた…)。絶望仲間がここに。ちなみに、柴田さんの翻訳教室に2度参加したことがあり、どちらも面白くて有意義で貴重な体験だった。けど自分には旧訳の方が魅力だったかな…って、忘れてたくせに!
モンキー ビジネスのこの号は去年キリン書房の店先ワゴンに100円で積まれてたのだが、それから間もなくしてその古本屋が閉店してしまった。意外と私好みの本が置いてあり、ネットから検索も可能で重宝してたのに…すごく残念。もう一つ、時々チェックしてた古本屋も去年あたりに閉店してる。
古本屋の主人というのはたいがい、本棚の隙間の狭く奥まった位置に暇そうに座ってて、買うとたまにオマケしてくれたり、口癖のように「もう閉店する」と言うものなのだろうか。そこに長いこと積まれたノーマン・メイラー全集を横目で見ながら、かつて読んだ、或いは読む気で買ったのに手放した誰かを想像したものだった。本が一旦売れたからここにあると思うと、昔はこんな傾向の本を買う層がいたんだなって時代を忍ばせたりする。そこが古本の面白さというか生々しさでもある。あの大量の本は今どこへ?