アラウンド90の母親が、日頃買い物に使ってた2輪カートは腰が疲れるというので、もっと安定する4輪のカートをレンタルしてみることにした。
介護サービス事業者がはじめに持ってきたカートは、折りたたみ式や椅子付きなど立派なモノだったが、重くてかさばるし、母はすぐ嫌がった。ならばと、今度はシンプルで軽く小さなタイプを用意してくれたが、それもイマイチ気に入らず。「そもそも道路が悪いから出かけたくない」と言い出し(確かに道は穴ぼこだらけだ)、あいにく天候もよくない日が続いたので、なかなかお試し運転に至らなかった。
先日ようやく説得して、付き添ってスーパーまで新カートで出かけてみたら、舗装の悪い道を避けて迂回コースを行くと言う。そっちの方が歩道が整備されて歩きやすいには違いないが、やはり遠回りはめんどくさい。結局、帰り道ではまた普段どおりのコースを歩くことに。それまでは片手でゴロゴロ引きずっていたのが、4輪カートは押す形になって真っ直ぐコントロールしにくいとのこと。色々難しい。
とにかくまあ、後期高齢者が新しい道具、新しい習慣を身に付けようとしてもまず無理だ。人によるとはいえ、それを要求するのは酷だ。カートに限らず最近のモノは多機能で混乱するし(私だってそう)、使う前から拒否反応は避けられない。うちの実家は今だに二層式洗濯機、ガス釜を使っている。以前、全自動洗濯機を導入しようと物色したことがあったけど、結局それを置くスペースがなくて諦めたのだった。今どきの家電、複数の用途を合わせたのが多いせいでか、大きすぎない?
今思えば、せめて5年くらい前に色んな生活必需品を新調しておくべきだった。時すでに遅し。今更もう新しく使い方を覚えるのは無理だ。母は旧来の折りたたみ携帯を一応持ってるが、短縮ダイアルボタンで私にかけるのが精一杯。そもそも耳が遠いので、一方的に話してこっちの声がちゃんと届いてなかったりする。しかも家のTVを大音量にしてるから、ますます聞こえるはずがない。
家の固定電話にかかってきた呼び出し音も、ほぼ聞こえてない。それどころか、「今電話がかかってきたけどどうすればいいかわかんない」と私に電話がきたことがあった。なんでも、取ろうとしたら保留になったとかなんとか話の要領を得ないのだが、その声の背景に電話の呼び出し音が鳴り続けてる。こっちも訳がわかんないまま、困ったことになったと、取り急ぎ近所なので母の元へ駆けつけた。
すると、どうやら…話をまとめると。固定電話が鳴った→携帯に出ようとした(なぜ)→出られない(通話できない)→困ったので携帯で私に電話した(は??)という流れであった。いやいや、どこからか掛かってきた(と思い込んだ)その携帯で私と話してるというのはおかしいだろ!…という辻褄はもう置いておくしかない。家に複数の電話があるからいけない。
かように、高齢者と現代のテクノロジーは不条理な矛盾だらけなのである。明日は我が身。私も先を見越して、なるべく最新機器を先取りした方がよい気がする。既にやばいとも思うけど、これからますます複雑になるのだから。