2月はマイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルの長編を4本、期限内駆け込みで短編1本。ほかの配信で9本、BSで1本。劇場で『哀れなるものたち』を観てきた。
MyFFFでは巷の評判が高かった『イヌとイタリア人、お断り!』がやはりとても良い。語り手である祖母、働き手稼ぎ手として酷使されてきた手、国や教会の権力という大きな手、人形や背景美術を動かす作り手、一家の物語に手を差し伸べる孫の手。ストップモーション・アニメにふと混ざってくる実写が、監督自身のルーツと移民の歴史を手繰り寄せる。手は憶えている。
同じく『スペアキー』もじわじわ良かった。フランス伝統?のヴァカンス映画の一種で、こっそり他人の留守宅でひと夏を過ごす主人公の女の子はアントワーヌ・ドワネルの系譜ともいえそう。でも「大人は判ってくれる」んだよね。
フランス映画といえば、去年公開になったニコラ・フィリベールの新作ドキュメンタリー『アダマン号に乗って』、久々観たアニエス・ヴァルダの(マイ・オールタイム・ベスト10本に入る)『幸福(しあわせ)』も。やっぱヴァルダすげえ。ここ数年ヴァルダの凄さを再認識してる。
沢山ありすぎて配信で何を観るかは悩ましいんだけど、自分は新旧東西ジャンルを続けて偏らないよう選ぶタイプ。アメリカ映画から非英語圏映画や古い邦画、メジャー大作からインディ、ホラーからロマンティックコメディ、敢えて雑多に味と栄養のバランスを取るつもりで。
ということで、苦手の小津安二郎に手を出してみたのがサイレント喜劇の『出来ごころ』である(去年地元でやった上映会を見逃したので)。ガチガチに構図が決まった時代のよりずっと観易かったけど、それでもスタイリッシュ。それになんだ、これ昭和初期のブロマンス映画じゃん!
そして実は観たことなかった『さらば、わが愛 覇王別姫』も、今頃やっと挑戦。4K上映ではないけど、画面も物語も濃厚で重くてグッタリどんよりしてしまった…。何しろ、京劇舞台で演じる虚構の外側がこれでもかとグロテスクだからしんどい。
一方で、ひたすら楽しめたのが『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』。前作もすごかったけど、更にまたとんでもないことになってた。私はサム・ライミのスパイダーマン3部作大好きだし、MCUのスパイディも好きだけど、何が好きって「NYの隣人」であるスパイディ精神なんだ。マルチバース設定SFでもそこはブレない。ベタだけど今回のパンクスパイディ大好き!
原作も読んだ『哀れなるものたち』映画版は、ジャースキン・フェンドリックスの音楽がすごく良かった。エレクトリックでアナクロでユーモラスな不協和音が、跳ねるような弾くような浮遊感。サントラと他のアルバムも聴いてた。
そういや年々興味が薄れてる(なんならちょっと気が重い)けど、そろそろオスカー授賞式だった。既に去年の作品賞なんだっけ?状態だし、そんなもんである。