学校で問題児と言われている子供がサッカークラブにやってくることはよくあります。しかし不思議なもので、サッカーコーチという立場で見ると彼らは総じて頼もしい。物怖じせず、行動力があり、自分の意見を持っている。
ある少年は練習内容がお気に召さないとその練習には参加しませんでした。隅っこの方に行ってひとりでボールを蹴っている。楽しそうなら参加するけど、そうでなければやらない。それははっきりしていました。「僕らはなぜサッカーをするのか」。彼はそういう事をこちらに突きつけてきたのです。
一見、この行動はわがままに見えます。でもある意味、彼はサッカーのなんたるかを教えてくれました。
彼が参加しない練習は、おそらく他の子供たちにとってもそれほど楽しいものではなかったのです。聞き分けのいい子供たちは、わがままを言わずにこちらの提示した練習に付き合ってくれている。でもそれは、言われたことをこなしたに過ぎない。当然大した上達には結びつかないものです。
「僕らはそういう練習では上達しませんよ」
そんな無言の反論によって、僕は何か大切なものに手が届きそうな気がしたのです。