このタイトルだと、蛙が可哀そうだとは思うけれど。この蛙は、僕自身のことである。可哀そうな蛙になる前に、大海へ、鍋の外へ出航予定だ。
今の会社は派遣社員として出勤している。出勤し始めて半年とちょっと。業務にもある程度慣れてきたけれど、来月いっぱいで派遣先を変えるために動き出している。
次の仕事も派遣で探しているけれど、派遣というのは、見れる範囲や触れる範囲が広くはない。僕は限られた水域で暮らしている。水域というより、外が見える水槽とも言えるかもしれない。水槽の外をガラス越しに見ると、彼らもまた、井の中に居るように感じる。同じ穴の狢だ。彼らもまた、海が、空が、森があることを知らないのかもしれない。
この井戸で暮らすことは、正直に言えば容易い。容易いと思えるということは、容易くない暮らしがあったということでもある。この井戸の中では、比較的泳ぎがうまい蛙に属している。ただ、そう思っていることが、怖いとも思っている。
このままでは、思い上がり、逆上せ上がり、茹で上がる。ぬるま湯は温かくて、一見居心地がいいが、それが終の棲家なら問題ないだろう。ただ、まだ先があるのなら、寒かろうが熱かろうが、鍋の外で一度常温に戻した方がいい。
だから僕は、外に出る。