ぼくは戦争は大きらい(やなせたかし 著/小学館)
『アンパンマン』の作者・やなせたかし氏が、自身の戦争体験を語った本。氏は軍隊に徴兵されて中国に渡った、そこから終戦後までの体験が綴られている。
現在は新装版のものが新たに出版されているが、最初の出版は2013年12月で、その取材期間は同年4~6月、氏が亡くなったのは同年10月と、本当に亡くなる直前に語られたことになったことが、後書きで構成者から語られている。
氏が所属していた部隊では、戦火の真っ只中にあったわけでもなく、中国での徴兵で村を占拠するなどしていたが、人に手をかけることはなかった、運が良かったとも語っている。
それでも、部隊は中国大陸を数百キロも徒歩で進んだ話、途中の交戦で仲間が死んだ話など生々しいものや、その時の日本は、他の国より戦力も考え方も遙かに遅れているのは明らかだったこと、上官の中には人間的に駄目な人もいたことなど批判的なことも語っている。
でも不思議と、読んでて辛くはなかった。戦地では娯楽がほとんどなかったので、絵を描いて部隊の人だけでなく現地の子供にまで喜ばれたとか、馬にらなければならなくなって、馬にも色々な性格がある話とか、氏の人柄を感じる話も多い。
言わば、このような話であまり聞かれなかった、戦場での「人」の話が中心だった。