ドロヘドロについて語らせてください。お願いします。俺が病気なんです。
林田球『ドロヘドロ』、ストーリーは謎が謎を呼んで混沌としており、それがドロヘドロ……。なので説明はしない。できないとも言う。トカゲ頭の大男と餃子の旨い飲食店店主の女が、トカゲ頭の本当の顔を探してドッタンバッタンする話と思ってください。あと、普通の人間と魔法使いの2世界あって、人間は魔法使いの魔法の被害者になってます。
このマンガの何がいいって、男女二人組の関係がどれも大正解なのである。語らせて。
まず何を置いてもこの二人。主人公であるカイマンとニカイドウ。件のトカゲ頭と飲食店店主である。二人は「友達」だ。本当の顔を探して魔法使いを狩り、今回もダメだったと言い合いながらニカイドウの店で餃子を食べてビールを飲む。野球大会では、キャッチャーとピッチャーの名コンビだ。なにより「友達」だから、それだけでお互いのために命を張れる。そう!二人は友達!!カイマンは記憶がなくてその正体こそがストーリー最大の謎だし、ニカイドウは大きな秘密を抱えている。それらは二人の関係に罅を入れうるものであるが、そんなもの二人には関係なかった。友達は友達だし、最後にはニカイドウの店でビールを飲んで餃子を食うのである。
二組目、魔法使いの掃除屋、心《シン》と能井《ノイ》。先輩と後輩であり、背中を預け合う「パートナー」である。なんのパートナーかと言うと、物騒な掃除屋さんのパートナーだ。相手をバラバラにする魔法と凶器のネイルハンマー片手に暴れる心先輩と、回復魔法で大体の怪我をなかったことにしながら肉体言語で戦う能井後輩。能井はとにかくデカいのだが、大型犬じみた愛嬌のある女である。初見、彼らは魔法使いの文化でマスクを被っているため、そこそこデカイ男に懐くめちゃくちゃデカイ男の図に見える。しかし、マスクをとると、めちゃくちゃデカイ美女がそこそこデカい男に懐いているという真実が見える。可愛い。可愛い上に強い。能井は、その昔、悪魔になる試験を受けるほどの才媛であったが、その最中に二人は出会い、いろいろあって、心への恩義で能井は試験をリタイアする。そして掃除屋のパートナーとなったのだ。このパートナー制度も、数年に一度、しっかりとした契約書を作る魔法使い独特の風習で、他にどんな奴がパートナー契約を持ち掛けてきても、心も能井もお互いとしか契約しない。相棒。ベストオブ相棒。
三組目、藤田と恵比寿。この二人は、なんて言うか、なんなんだろう……。二人とも魔法使いなのだが、別にパートナーではない。藤田は己のパートナーの仇を取ることに執着しているし、恵比寿は諸事情によりイカれている。しかし、藤田は恵比寿に振り回されながらも面倒を見るし、恵比寿は恵比寿なりに藤田を案じている。一応、パートナーになろうと言う意思が恵比寿にもあった。アクシデントで契約できなかったけど。この二人は、なんなんだろう。擬似兄妹にも似ているし、振り回されてる飼育係とめちゃくちゃなナニカのようでもあるし、ある種のボーイミーツガールの可能性もある。わりとディスコミュニケーションなところが、二人の関係の面白さを際立たせている。
このように、ドロヘドロに出てくる男女二人組の関係性は、最高なのである。勿論、会川と栗鼠などの男同士の関係も上手い。牧歌的グロが大丈夫な方、ぜひ一度お試しください。