短歌2025

たぬきA
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公開:2025/12/11

上から下に、古いです。あと、まだ作ったら、足す。


喉元をゆっくり触って確認する 灰になるまでそこに御座おわして

寒い夜 路上は海の底以下に沈み私はウミウシになる

暖かな春の風など生ぬるい サーキット荒らす我ら春嵐

駆け抜けろ、疾走ではなく暴走と言われようとも止まるな走れ

電線のソの音あたり薄い月 喇叭を構えて息を吸い込む

血を流し何の為かと自問した 今やこの身は鉄の塊(ミルサブ・サイボーグボーイズに捧ぐ哀歌)

深夜迄南瓜角灯薄明 百鬼夜行跳梁跋扈

夕焼けの橙色に照らされて金木犀がステルス芳香

この雨が私の喉を締め付ける 辛いことなど何もないのに

どんなにも心揺さぶる絵を見ても出てくる語彙はペットスンスン

今もなお消えることなき煉獄を押し流さんと秋雨が降る

ジリジリと腕が焼かれたパンになる バターもジャムも塗りたくないが

約束はいつ果たされるか分からずに 青空の下、手紙待つキミ

「きみたちはちゃんと生きて死んだのだ」幽霊たちが蝉を労う

カップアイス片手に持ってサンダルで走って家まで溶かすものかと

今宵にて輝く夜は終わります 明日からきみは日陰を歩く

僕達は同じ岸辺にいるんだし素麺食べて空でも見よう

昔から好きだった歌口ずさみ殴り飛ばすのあれやこれやを

君のこと愛した記憶はあるけれど貴方から愛されたことなく

その穴は痛みもせずに見つかって悼まれもせず葬り去られる

血のようなツバキの枝の切先を喉に突き立て愛を囁く(阿修羅城の瞳によせて)

あれもこれもと積み上げたクッキー缶空になるまで一緒にいようね

消え去ったあの鳥たちの屍が電線で鳴く「まだ生きている!」

幸福と絶望の果て探すけど生きる限りは広がり続く

浮ついたハッピーアワーを撃ち抜いて駆けて逃げ出す終末の街

幸福を願う一方で呪い吐くなんとも人は恐ろしきもの

屋根よりも高みを目指し登り詰め出来たこちらが鯉型コロニー

散々に落ちた桜を集めても綺麗な花はできやしなかった

ボクなんて信じない方が良かったよボクが一番信じてないし

呼ぶ声も向ける笑顔も何もかも恋と呼ぶには憎しみが勝つ

あの輪っかから光など立ち上り神が降り立つのを期待する

さよならも言わずに顔を撃ち抜いた思い出もない、あるはずがない

空は晴れ桜は咲いて人もいる そうだ今なら消失日和

「永遠にこれからはずっと一緒だよ」そう嘘をつく その手を離す

君が春というのだから春でしょう 陽は射さないし花もないけど

最新の狸囃子は電子化しオタマトーンとビブラスラップ

雨空を眺めて想うただ一つ、会いに行きたい苺のショート

便箋と鉛筆を買いシロクマに宛てた手紙は「息災ですか」

意味もなく重なり歪み固まってきらり煌めくオバケになるの

望むなら目となり足となりましょううら裏オモテ貴方と私

昨晩の君の残り香が消えなくてその重みだってここに残ってて(焼肉の歌)

「氷河期に比べたら、まあマシだろう。俺もいるし」と鳳凰語る

砂の海その真ん中を揚々と騎馬隊が行く幻を見る

この世には僕を愛しているような顔をしている悪鬼がいるの

髪を切る膝の上には私から分離してきたポメラニアンが

身に纏う黒一色のワンピース 魔女になるのと貴女は微笑う

懐に四次元はなく有限で精一杯の温もりつめる

「亭主がさ、動かないの」と雪女「キミのご亭主、変温動物カッパじゃなかった?」

雪よりも冷たい君にココアをとそっと渡した指先溶けた

花籠に野草を七種雑に入れ火を着けたなら貴方に届く?

朝の日に生まれ変わると誓えども三日経ったらいつもの僕さ

走る人炬燵に潜って見る怠惰 感動だとか言う資格問う

@ssazu3210
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