友人と本のはなしをしていた時のこと。村上春樹の話題になり、思い出した!とそのタイトルの文鳥文庫を渡してくれた。8ページにぎゅぎゅっときちんと内容が詰まっていて、逆に単行本を買って読みたくなる。
内容は、ぼくが100パーセントの女の子とすれ違うはなしなのだが、すれ違うまでのわずかな時間のなかの物語は、そこに何十年も経っているような長い時間が流れているように錯覚してしまう。でも、すれ違ったすぐあとは現実の時間に戻される、虚構と現実。空想の時間がとても素敵に描かれていて、映像が目に浮かぶよう。
こんなにステキな内容ではないけれど、ある一瞬の時のなかに同じような経験をすることがあるな、と、ふとある出来事を思い出した。
ふらりと入ったお店の主とは全然面識はないのだが、小さなお店だったので『いらっしゃいませ』のことばに『こんにちわ。』と返す。店主が『どこかでお会いしたことありますか?』と話しかけてくれたが、わたしは初めてお会いします。と答えた。
『ぼく、あなたのこと知ってます。』と会話が続く。わたしはいろいろな記憶をたどってみたけれど、どうにもこうにも思い出せず。どうやら店主はわたしの旧姓も知っていているようだ。ちょっとこわくなって、いろいろ話しているうちに高校の先輩後輩だったということを知る。でも、1度も話したことはないらしい。
店主のちょっと甘酸っぱい思い出話を聞いて、わたしは顔が熱くなった。恥ずかしいやら、うれしいやら。胸が高揚していたためか、商品を手にとってみるもこころがそわしてしまい、買い物も早々に切り上げ『また来ますね。』と言って店を出た。
学生時代なんて、もう30年も前のことだけど、学生の時に同じようなことがあったとしたら、わたしのいまは変わっていただろうか、、。などと想像してみたり。ひさびさにわたしのなかの『女の子』が顔を出した。
きょうはレモネードを飲んで帰ろう。