3 プロジェクト(4/9)

stc_m
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寒くて目覚めた朝。雨の匂いと音が私を包む。はぁ、雨か。引きこもれる時は好きなんだけれど。宿泊施設からたかが5分の出勤に辟易していたが、そんなことが吹き飛ぶくらい憂鬱な研修が私を待っていた。

その研修はチーム単位で案件に取り掛かり、受注を目指す方式だった。ここからが問題で、どれほど貢献出来ていたかを班員とシールを交換するものだった。私は予見通り1つ目のミッションでシールを貰えなかった。性格的に、活躍できるようなポテンシャルを私は持ち合わせていない。自惚れだが要所要所で関与できていてもインパクトやアピールが足らず、埋もれてしまうのだ。◆私は昔サッカーを熱心に取り組んでいた。あのころもゴールを決めるタイプではなくて、目立つような活躍はしていなかった。ゴールを決めずプレイしている私は当然、MVPをいただけなかったのを思い出す。あのときはまだ子どもで、よく見て評価してくれるコーチもいた。なかでも役の高いコーチからポジショニングやパスのだし先(視野)を褒められていたと人伝に聞いた時は、柄にもなく喜んだものだ。◆しかしもう、私は大人で、誰かに拾われるのを待つだけでは無能なのだ。アピールするすべを考えなくてはならない。雨の匂いと肌寒さだけが、私を離さない。