キメラ

佐和
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 自分にとって文章を書く行為は、まず大きなイメージを掴まえて、そこに肉付けしていく足し算の行為だった。だが、ひどいスランプに陥った時には足し算が乗算になってしまい、減算で不要物を取り除いていた。心身共にとても痛かったし、出来上がったものは哀れみすら覚える醜悪なキメラでしかなかった。文章の出力は自身に拠るものである以上、当時、鏡を覗いて焦点を結んだ結果出現していたのも、醜悪なキメラだったのだろうと思う。だが今ではいい感じに足し算ができている。たまにおっとっと……と引き算を行なうこともあるが、そうした危うさも楽しさの一貫として消費できる。コンディションとしては悪くはない。そしていつかはあの日作っていたキメラたちの鎮魂も兼ねて、文章にしてみたい。

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