寒い。先日から特大の寒波が来ており自宅でもヒートテックが欠かせないし、厚着に厚着を重ねてモコモコとした風体になっている。今冬は暖冬だという話であったので電気代をケチろうと暖房を一回も付けていないのだけど、そろそろリモコンに手を伸ばし、こう、ピッと鳴らしてしまおうかという誘惑に負けそうな自分が憎い。とにかく部屋が寒い。
部屋でガタガタと震えていると何故か思い出すのは町田康の作品だ。少し上品な方々は映画『ウィンターズ・ボーン』や『ザ・グレイ』などなど素敵な映像作品を思い出したりもするのだろうけど(実際に素晴らしい冬映画だ)、自分が思い出してしまうのは「六畳間に謎の虫が湧いてた」とかパンクな描写でろくでもない人間がろくでもない目に遭う事柄ばかりを書き続けてきた町田康の作品だ。『けものがれ、俺らの猿と』を初めて読んだときの衝撃は今でも忘れられない。
寒さや暑さで何かを連想してしまうのは素晴らしいことだ。現実逃避とも捉えられようが、まだ脳みそが自由闊達に働いているということだから。これが「寒い」→「エアコン付ける」→「寝る」程度の反応になってしまうと、少なくとも自分としては面白味が無いし、広義の物書きの場であるネットでは死んだも同然だと思う。連想したものが町田康の描く駄目人間たちなのはどうなのか? という問いには聞こえないふりをする。