瓶、って保存形態は、やっぱり狭いだろうか? 押し込めること自体が何か違う。
感情にぴったり合うかたちを探している。わたしの脳みその中、暗いドーム状のその奥に、見えるような見えないようなドアノブを回して、その部屋はある。わたしが感情のために作った部屋だ。
ドアを開けると、黒い塊からすぽりと小さなのがひとつ抜けて、首を傾げる。ごめんね、まだ悩んでるんだ。悩みの子、その頭を撫でると、潰れて苦しそうな声を上げる。
キャビネット棚はどうもイメージが湧かない。私は整理が苦手だから、すぐどこかへ行ってしまう。
ふと思い至る。自由なのだ。そう、子供の頃夢想した、無限を呼び出してみる。瓶の中には、無限の広がりがあって、そこに入れられたものはうごめき、柔らかに形を変え、自由に成長していくのだ。瓶ならば扱える。子供の頃給食で飲んだ瓶、きゅっと回る飴がいっぱい入った瓶、おとぎ話の中の魔法の小瓶。
そうやって瓶を選んで、収められた感情たちは、ひとつひとつが鈍く色を発しながら、部屋の中でふわふわ浮かんでいる。整理しなくていい。瓶のままでも、自由に飛んでいてくれればいい。
いつか蓋を開けられる日が来たら、顔を出したあの子が、整列して、ぺこりとお辞儀をしてくれたら、いちばん嬉しいな、と思う。