ohta
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ふと思い立ち、実家に帰ることにした。

住んでいる場所から1時間ちょっとかかる。同じ京都でもヨッコラショと気合を入れる距離。あたたかさで身体がほぐれ電車に乗る気分になったのかもしれない。

歳の離れた弟がいる。心優しくて弱気で毛むくじゃらで、シェットランドシープドッグの男の子。わたしが物心ついた時には犬がそばにいる生活が当たり前で、この子は2代目。先代が5歳くらいの時にお迎えした次男坊。

16歳。先代の寿命を超えて生きている。玄関の前に立つと歓声わんわんが聞こえるのが常だったけどもうほとんど鳴かない。おそらく目も見えていないし耳もかなり遠くなった。よたよたと健気に近づく身体に触れるとふっくらした毛の下に柔らかな肉と骨を感じる。ほっそりとして肉が落ちてきたな、きっともう身体の終わりは近づいている。

毎回思う。この子の中で私が消滅していたらどうしよう。でも目を合わせて戸惑いと嬉しさを浮かべる表情を見ると安心する。大丈夫。持ち帰ったケーキの箱には大好物の苺があることを知っている。嗅覚は健在。食欲も旺盛。

人間の3ヶ月は犬の1年らしい。あと何回会えるかな。この子の生涯が最高でありますように。ぎりぎりまでしっかりお見送りをしてくれる我が弟よ。

@sudachi
京都でお店を営んでいます。