太っている自分を好きになれずにいる。
本当に太っているのだ。身長150cmに対して、現在の体重はおおよそ60kg。医学的にも「肥満」と定義される。
ダイエットには何度も挑戦している。毎日ウォーキングをしようと試み、雨の日は筋トレをして運動習慣を絶やさないようにする。たまにはキツいことをやって達成感を得たいので、「筋肉体操」なんかに手を出してみたりもする。
それがどうしても続かない。「続ける」というたったそれだけのことができなくなってしまった。
3年前の私は痩せていた。身長150cmに対して体重は44kg。この体型を維持するため物凄い努力をした。週5日以上ジムに通い、家での筋トレも欠かさなかった。炭水化物はほとんど口にせず、栄養管理に心を砕いていた。大好きな酒も滅多に飲まなくなり、外食では食べられるものがほとんどなかった。そんな生活を3年以上は続けていた。
それでもいつも「まだ太っている」と思っていた。昔から肉付きがよく、いわゆる「骨格ストレート」と言われる体型のおかげで華奢に見えなかった。それがずっとコンプレックスだった。
線の細い、思わず抱きしめて守ってあげたくなる雰囲気になりたかった。ストンと落ちるロングスカートにたまらなく憧れ、ぶかぶかのパフスリーブを風に揺らしながら歩いてみたかった。その願望は今も胸のうちにくすぶったままだ。
うつ状態、と診断されて飲み始めた薬には食欲増進効果があった。食べられなかった私の栄養状態を救った大切なお薬。食べても食べても、食欲が止まらない。でも動けない。動く気力がない。日常生活もままならないのに、運動なんてできるわけがない。
今でも、少しでもメンタルが崩れると、途端に身体が動かなくなる。難儀なことである。おかげさまでプラス16kg。多分もう痩せることはできないんだろう、と、最近は思い始めた。
きっとこれが本来の私の姿なのだ。薬はただ、私を自然な状態に戻してくれただけのことなんだろう。精神を病まない私の姿は、ふっくらと丸みをおびて幸せそうにおいしいものを頬張っているんだろう。神様がきっと私をそう創ったのだ。
夫は私のふくよかさが気に入っているらしい。よく私の腹に顔を埋めては深呼吸をする。「まるまるして可愛い」と愛おしそうに頬を撫でる。実に信じ難いが、素直にうれしいと思えるようになりたい。自然なままの私で十分に魅力的だと、胸を張って笑えるようになりたい。
[了.]