こんなに幸せでいいのだろうか、と思いながら一年が経った。
まるく、まあるく、棘を抜きながら生きようとしてきた。
目立つのは実は好きではない。いじめられるからだ。「お前なんかが生意気だ」「偉そうに出しゃばって気に食わない」「自慢したがり」。なるべく気配を殺しながら生きているつもりなのに、新しいところへ行けば必ずぶつかる人がいて、そのたび自分を恥じていた。「放っておいてくれよ」と思いながら、その一言が言えない。面と向かって「お前が嫌いだ」と言う人はいなかったからだ。
私なんかがいてすみません。あなたに迷惑かけないようにしますから、気にしないでください。
その言葉を何度も飲み込んで、曖昧に笑っては手のひらに爪痕を増やしていく。やりたいようにやったら誰かの迷惑になる。「普通」になれないのが苦しくて何度も窒息しかけては、それでも人と生きていたかった。そんなの、エゴだろうか。そこにいるだけで誰かの迷惑になるなら、一人で生きていこうか。
そんな自己肯定感の低さを叱り飛ばして、「そのままが好きだ」と笑ってくれる男性が、私と家族になりたいと言ってくれた。
棘を飲み込めば内側がズタズタになる。彼はその傷を慰めない。腫れものに触るように「つらかったね」って言ったりしない。私が傷ついていようが、ささくれ立って彼を傷つけようが、はたまた勢いよく「愛してる」ってぶつけようが、ただいつも私のことが好きで、私のことを想っていて、それが自然と振る舞いにあらわれて、それだけである。
「大切な人が傷つけられたら怒るのなんて当たり前やろ」
親しかった人に暴力を振るわれたことがある。ことの次第を知って彼は烈火の如く怒り狂った。怒りで我を忘れる彼を見て、「私にも原因があった」と思う気持ちはしぼんでいった。私の大切な人をこんなに怒らせているのに、なんで私は私を傷つけた人を庇っているんだろう。
初めて自分に価値があるのを知った。私はこの人の大事な存在なんだ。愛されて、幸せになって当然の、普通の人間なんだ。
この人のために私は私を守ろう。この人を幸せにしたい。幸せでいよう、なるべくずっと。私の笑った顔が何より好きだと言ってくれるこの人と、幸せになりたい。
その日から、泣きたくなるほど毎日が幸せで愛おしい。
きっと死ぬまで続く幸せの、最初のひとひら。大切な一枚であなたと家族になって、ようやく一年。
明日からもずっと、あなたと笑って生きていく。
[了.]