おそらく双極Ⅱ型障害を患っている。
確定診断を得ていないので「おそらく」としている。生活がままならないほどのうつ状態で受診したのは3年前のことだが、はっきりした診断名は未だに告げられていない。分かったところで「病名がついただけ」のことなので、自分の病名を知らないことは私にとってさほど重要ではない。医者に行かずとも「たぶん風邪だろう」と思えば身体によいものを食べてよく眠るのと同じことである。
だから重要なのは「如何にすれば私の中の荒波をコントロールできるのか」ということだ。その波が荒ぶる原因は何なのか、一体いつ荒波がやってくるのか。これを毎日読み解こうと試みているが、これが非常に困難なので難儀している。
「今日は何だか調子がいいぞ」と思えば、大抵の場合それは軽躁状態である。こういうときに人に会うと数ヶ月先まで予定を詰め込んだり、無茶苦茶な仕事スケジュールを組んだりして休日が消滅する。仮に予定のない日があったとして、身体が動く限り絶えず動き回っている。やりたかったことをやり尽くし、へとへとになってようやくベッドに入る。ぐっすり眠れるかと思いきや、脳が爛々と覚醒していてまったく寝付けない。そんな日々が続くと脳と身体がオーバーヒートして、ある日突然ぷつんと動けなくなる「うつ状態」がやってくるのだ。だいたいこれを1ヶ月~3ヶ月サイクルで繰り返すのが私のパターンである。
身近にも波の激しい芸術家がいるのだが、その人が自身を「宇宙人」と表現するのを聞いて、たいそう合点がいった。ああ、きっと私の中にも宇宙人がいるのだ。地球のリズムに適応できなくてずっと苦しんでいる。地球人の身体に入ってしまったせいで、酸素と水と食物を摂取しながらきちんと眠らないと生きていけない。おまけに地球人が愛おしいので、地球人のコミュニティに馴染みたくてたまらないなんて。まったく不自由なことである。
何となく月経のサイクルとともに躁鬱のリズムが作られているような感触があって、それに気づいてからは少しなりとも予測ができるようになった。「今は『上がっている(躁状態)』から出かけるのは止めておこう」「来週は多分動けなくなる」。分かったからといって防げるものでもないのだが、心構えができていれば少しは違うものだ。私の中の、不器用で厄介な宇宙人。それでも、地球の女の身体に一生懸命馴染もうとしているなんて、何だか可愛らしいではないか。
[了.]