先月に引き続きネタバレ配慮なし、うろおぼえだったりそうじゃなかったりします。わりとうろおぼえなので全体的にワヤワヤな感想文。すべて個人の主観です。
・わたしたちが光の速さで進めないなら/キム・チョヨプ カン・バンファ ユン・ジヨン訳
韓国文学でSFをよむのははじめてだったのだが、生活基盤が似ているからか没入しやすかったしとても好きな作品だった。表題作がいちばん好き。人間に対してやさしいまなざしを感じる作品たちで、内容はまったく違うのだけれど、「回樹」をよんだ時と似た読み味を感じた。忘れた頃にまた再読したい。
・蜜蜂と遠雷/恩田陸
・祝祭と予感(幻冬舎文庫)/恩田陸
「チョコレートコスモス」を勧めてくれた友人が同じく勧めてくれた作品。中盤くらいから加速度的におもしろくなっていって、読み終えたくないけど早くページをめくって続きを読みたいけどあ、もう終わっちゃう、終わりたくない!!!と思ってそのまま短編集を借りに走った。恩田陸作品でいちばん好きかもしれない。クラシック音楽の素養があったらこの曲かあ~!とにまにまできたんだろうなあ、おのれの教養のなさが恨めしい……。作中で使用されている曲のコンピレーションアルバムがあるようなので聴きたいきもち。
・霧のむこうに住みたい/須賀敦子
知人が気になっていると話していたことから気になって借りた本。わたし自身は欧米での生活に対する憧れが薄いニンゲンなのでなるほど~と思いながら読んでいたが、描かれている年代のイタリア、これってジョジョ2部あたりドンピシャだったりする……!??!?とドキドキした。
・推し短歌入門/榊原紘
推し短歌を作りたい、というより短歌の持つ余白のうつくしさが好きなので、自分の書く文章の参考にならんかな~と思って読んだ1冊。推しと短歌をつなげるワークシートページがわかりやすく視覚的に情報整理できて、なるほど参考になる……と思ったし、短歌の基本ルールなど存じ上げないまま歌集を読んでいたので、そゆ意味でも勉強になった。
・koro/榊原紘
「推し短歌入門」がとても勉強になったし、引用されていた短歌が好きだなあと思ったので図書館で借りてみた1冊。第1歌集には「おおきく振りかぶって」をテーマにした歌が載っているとあったのでそちらもよみたいのだが、本屋でも図書館でもめぐりあえず、ムム……。特に好きだった5首を引用。
憧れは鏡のようで割れたあとよけいに光る 連れて行くから
捨て台詞をくれよそれだけ胸に布き百年先も笑えるような
生きているだけで埃はたまるなぁ 怒りで富めるならもう富豪
ボトルシップな底に小さな海がある 語彙がないから恋になるだけ
寝ていてもいいと言うときやさしさに似た感情の存在を知る
・滅びの前のシャングリラ/凪良ゆう
既読の凪良ゆう作品がどれもやさしい世界(現代社会におけるマイノリティに対する描写にやさしいまなざしが感じられる)の話だったので、これまでとの印象の違いにびっくりしたけれど、やっぱり作者のやさしいまなざしが感じられて、好きな作家さんだなあと思った。スクールカーストの描写にスゲー既視感あるな……あっ美しい彼!あっ同じ作者だわ!!とひとりでアハ体験をし、ウケた。
・照子と瑠衣/井上荒野
書店で平積みにされているのを見て気になっていた1冊。さわやかなシスターフッド小説でさくさく読めたし、高齢女性たちが「自分」を生きるために連帯してゆく物語があること、希望だな~~と思う。
・「烈女」の一生/はらだ有彩
知人と書店に行った際ぱらぱらめくったいちばん最初の章がトーベ・ヤンソンだったので、気になって手にとった1冊。怒れる女性たちについて描かれた文章をよむと自分も怒れるパワーのある女のひとりでありたいと思った。というか、「読ませる」文章がウメー……。同じ表現を重ねて使うことで印象づける文法が好きなので、内容の重さに対してとてもきもちよく読めた。
・ハジケテマザレ/金原ひとみ
チマチマ続く金原ひとみ作品ブーム。ジュンク堂のポップを見て気になった本。直近で読んだ2冊もそうだけれど、地の文から登場人物の声が聞こえてくるような「生」っぽさがすごく好きだなあと思うし、コロナ禍という「今」を描かれていることにすごく合っている文体だな~と思う。リアルタイムで読んでいるからこそしっくりくるものがあるとも思うので、もっと遠い未来で読んだ時にどういう印象を持つだろうかとわくわくするし、昔読んだ「蛇にピアス」を今読んだら印象も違いそうだな~と思うので、そのうちよみたい。
・オール・ノット/柚木麻子
ヤングケアラー、性的指向、性加害、貧困など女性が直面する多くの問題を真っ向から描かれた作品。読み終えてからくったりしたけれど、タイトルの「オール・ノット」は傷ついてもちぎれないネックレスにかけられていると思ったので、そのタイトルにこそ救いと祈りを感じた。描かれていた未来で同性婚が法的に認められていて、けれど日本は貧しい国で、100%望む未来ではないけれど、せめてこうであってほしいよお~……と思った。
・一寸先の闇 澤村伊智怪談掌編集/澤村伊智
掌編という短さゆえか「ぼぎんわんが、来る」よりもダイレクトにキッチリホラーをやられてじわじわめちゃめちゃこわかった。よんでいて脳内に映像がわかりやすく思い浮かぶのがこわい、文章がウメ~……。個人的に「内見」がマジでひきずるこわさだったのでひとに共有した~い……ホラーがイケる知人がいな~い……。
・ライオンハート(新潮文庫)/恩田陸
・木漏れ日に泳ぐ魚(文春文庫)/恩田陸
・ねじの回転/恩田陸
「蜜蜂と遠雷」がおもしろすぎる……という話をしたら友人知人諸氏から勧めてもらった恩田陸作品たち。本当に筆の速さとジャンルの多彩さに舌を巻く~。「木漏れ日に泳ぐ魚」は村上春樹作品に近い読み味を感じた。「ライオンハート」と「ねじの回転」はわたしにもっと歴史的素養があったらもっと深みを感じただろうな……くやしい……(本をよむたびおのれの教養のなさを嘆くニンゲン)この3作品のうちだと「ねじの回転」がいちばん好き。最近ぽちぽち刀剣乱舞をやっているので、時間遡行についての考えが深まるなあ~と思ったし、とにかく伏線回収がきもちよくて、歴史を否定しない、これから先の未来をつくっていくのは今を生きる人間なのだということが感じられるオチがすごく好きだったし、終わり方がすごく好きだ~……。深夜アニメとかになったら映えると思うんですが、まだやってないんですか?そう……。
以上、計15冊。たいへんよくよみました。
見返すと4月は恩田陸月間だ!情緒がグズグズだったわりにあんまり読んでないな……と思いつつ、そういえばバトル・ロワイアルを読み返したり、中途半端に読んで集中できずに投げた本があったりもした。「本を読む」もできなくなると本当~~に自己肯定感が下がってゆくので、せめて文字を読むことはしたいなあのきもち。
おしまい。