ディオジョナエリに対してつよい「思想」を持ついちおたくの個人の主観にもとづく感想めも。ネタバレ配慮なし。
2/17(土)18時公演(松下/東山ペア)
個人的初日、ネタバレには一切触れずに観劇。
1階H列上手サブセン。
アニメでは大川透さんのナレーションとなっていた部分をどう表現するのか?という疑問を開始即「SPW財団員に残されたビデオレター」という形で解消されてなるほど~!と膝を打った。メキシコ、柱の男の遺跡に向かう前に残されたビデオレターという体に2部が大好きなおたくとしてはニコ……だし、その流れでアステカ文明、石仮面の説明に入るのがとても自然で物語の運びがうま~い……。感心とともに、この説明にこれだけの尺をとってくれるんですか!?とびっくりした。
脚本は「ひとりの囚人は星を見た、ひとりの囚人は泥を見た」「『受け継ぐ者』と『奪う者』」というジョナサンとディオの対比を主軸とする形で物語が再構成されていた印象。バトルシーンよりも個々のパーソナルな部分、「家族」にまつわる物語が主軸となっていたように感じられた。1幕はジョースター邸での戦いまで、2幕から波紋編だろうなとは思っていたが、原作を補完するようなエピソードを挟んでまで青春時代の彼らを描いてもらえるとは思っておらず、こ、このペースでやって本当に3時間で終わるのか……!?とドキドキしていた。ので、忙しい人のためのウィンドナイツ・ロッドにそれはそう!と納得したけれど、キャスト発表時にタルカスとブラフォードがいなかったことで黒騎士たちとの戦いはカットもあり得ると思っていたので、しっかりその戦いも描いてくれてうれしかったし、「ひとりの囚人は星を見た、ひとりの囚人は泥を見た」の話を黒騎士の話題に絡めて1幕でする流れが本当にうますぎる。
「家族」にまつわる物語が主軸となっていることで、OVER HEAVENをかなり参考にしているだろうなと感じたし、OVER HEAVENでメチャメチャとなったおたくはメチャメチャとなった。マガジン掲載の身辺調査書にあったディオの恐れるものが「老いてゆくこと」であったことはダリオと同じ血が流れている、ダリオのような男になることに対する恐れなのだろうと思わされるだけの「呪い」を感じた。両親に対するディオの感情の描き方がかなり繊細で、これはおたくの中でも解釈の一致/不一致があるだろうなと思ったが、「嫌悪と家族に対する情は同居し得る」「家族は一生逃れられない『義務』『呪い』」ということをずっと考えている身としては(そして観劇前日に「ボーはおそれている」を鑑賞した身としては)個人的にはめちゃめちゃ刺さった。ディオが「抱きしめて"くれた"」という詞を歌ったことだけ解釈違いかも……。(ディオにとって愛は与えられるものではなく奪うものであり、奪うことしか知らなかったからこそのディオ・ブランドーだと思っているので……。)舞台で描かれた両親とディオの関係、感情を見た上で「父をおぞましく思っている、母のことも軽蔑している」を思うと、ディオは「愛」を愛として受け取ること、自分の持つ感情として理解することはできないという深みが……メチャメチャになる〜……。
執拗なダリオの「呪い」に対してジョースター卿の紳士の教えはただまぶしく、「ジョースター」と「ブランドー」の物語として構成が完璧だった。ジョナサンにとってのダニーの存在の大きさを補完する描写を入れることでダニーの喪失の重さが原作、アニメ以上に感じられたし、ダニーに対して「お母さんがいたらこんな感じだったのかな」と言うジョナサンに、「ディオがダニーを殺害する」ことに対してその「意味」まで上乗せする!??とふるえてしまった。ダニーの死にうなだれるジョナサンにそっと手を添えるディオの影が見えることにぞっとしたし、これまでに読んだふたりの青春時代の二次創作が脳裏をかけめぐった。1幕で丁寧に人間時代とその終わりを描くことでウィンドナイツ・ロッドでの戦いの終わりに流すジョナサンの涙に説得力が増したように思うし、ラストの戦いで青春時代の台詞がフラッシュバックする演出、「ふたりの青春の終わり」の描き方として大正解すぎる……。
舞台化に際していちばん楽しみにしていたエリナ、本当~~に最高のエリナだった。プリンセス・セレブレーションのテーマソングを歌った清水さんはディズニープリンセスの概念の歌手だと思っており、ジョナサンとエリナのデュエットだけはディズニーのような世界を感じられて、これが理想のジョナエリ……と噛みしめた。ふたりの出会いのシーン、アニメでカットされていた台詞がきちんと再現されていたし、出会いと恋、別れと再会、そして離別が短い時間の中で丁寧に描かれていてとてもうれしい反面、物語の主軸が「ジョースター」と「ブランドー」の対比となっているがゆえに船が沈む時エリナはふたりの間に入ることはできないという図がせつなかった。(ディオジョナエリ三重奏ほしかったよ〜……)
少ない出番の中でエリナの存在感、説得力をアピールしたのはその歌唱力によるものだと思っているが、とにかく音、音楽の使い方が上手で膝を打った。ディオ登場のシャン!やズキュウウンを生演奏の効果音で描き、メメタアは歌に組み込み発声する、ジョジョにおいて愛されている効果音たちを絶対に蔑ろにしないという意思を感じた。ダリオの「呪い」と同じ曲でジョナサンに呼びかけるディオ、ディオと同じフレーズでやさしくジョナサンに呼びかけるエリナ、という2幕入りに背筋がふるえたし、劇中同じフレーズを異なるキャラクターが用いることで対比が浮き彫りになる描き方がかなり多くてぐっときた。わたしは貧民街出身のディオとスピードワゴンの対比についておおいに思い入れのあるおたくなので、「この手には何もない」とすべてを奪うことを歌うディオに対して「この手には何もない」と歌いながら明日にある希望を待たないと決意するスピードワゴンにふたりのその先を思ったし、スピードワゴンを「おせっかい焼きの青年」ではなく「貧民街出身の男」として描くことでポコの役目を肩代わりさせることに意義を感じられたように思う。
ジョナサンとディオが歌う「星を見る」「泥を見る」「受け継いでゆく」「奪ってゆく」にとにかく揺さぶられているのだが、ふたりの最期、生きのびてやるとこの世に留まろうとするディオの手を強く引いて死に向かうジョナサンの姿があんまりにもあんまりにもすぎて脳を灼かれてまったく思考がまとまらない。すごい……何……?DIOは「ジョナサンは天国を見たに違いない」と言っているが、その実あの時ジョナサンは「ディオとともに地獄におちる」ことを選んだと思っているので、トンデモ解釈一致演出すぎてずっとメチャメチャになっている。どうして?
2/23(金・祝)18時公演(有澤/東山ペア)
1階O列センター。
幼少有澤ジョナサン、松下ジョナサンよりはるかに幼い!無垢にすこやかに育てられたこども、ディオの大嫌いなお貴族さまって感じでウワー……ディオ嫌いそ〜〜……とウケてしまった。そのぶんジョナサンの成長がさらに明確に感じられて、ウィンドナイツ・ロッドの最終決戦の迫力が本当にかっこよかった……。
ディオが「勝利して支配する」と口にしたことを再確認してメチャメチャになった。台詞や歌詞の端々に2部以降の要素が散りばめられていて、ここからすべてがはじまり、受け継がれてゆくのだということが言外に伝わってくる。ツェペリさんが座ったまま跳ぶ、ディオが左右のずれた顔面を直す、特に説明のない原作再現シーンにワ!となるが、あまりに自然に再現されるので自分が拾いきれているか自信がない。
東山ツェペリさんが本当にかっこよくて喋るたびめろめろになるが、直接台詞のやり取りがほぼないエリナに対しての所作のひとつひとつがウワッこの男……スケコマシーザーの祖父………!!を感じてとてもよかった。
前回よりセンター寄り席で見たから角度の問題なのか、ラスト、ディオの手を掴むジョナサンが松下ジョナサンに比べて力強く強引に見えて、ウワーッ!となった。有澤ジョナサンの力強さ、揺らがない主人公パワーが終盤につれて強固になってゆき、その手を振りほどくことを絶対にゆるさないという意思を感じ、そしてメチャメチャになった……。
2/25(日)18時公演(松下/東山ペア)
1階L列センター。
有澤ジョナサンを経て改めて観る松下ジョナサン、育ちがいい〜!有澤ジョナサンはパイプを吸うけど松下ジョナサンはパイプを吸わなそう、興津さんのジョナサンに近い印象なんだなあと思った。(有澤ジョナサンにはジョセフさんをそのまま演じてくれ!顔一緒だから!と言えるけど松下ジョナサンには……言えない……あんなことやそんなこと、絶対しない…………)有澤ジョナサンの「散滅すべし!」が本当〜〜〜にかっこよくて主人公すぎてめろめろになったのに対して松下ジョナサンのディオに対する向き合い方が「奇妙な友情」の解釈一致すぎてメチャメチャになった。ディオの首を抱いて沈む姿も、有澤ジョナサンは「覚悟」、松下ジョナサンは「慈愛」を感じて、それぞれ違った角度からジョナサンのかっこよさを感じられる最高のWキャストだ……としみじみ感じた。
切り裂きジャックとディオの邂逅、ウィンドナイツ・ロッドでの最終決戦前のジョナサンとディオの対話の中でディオが「恐れをなくし、安心を与える」「安らかな世界のための貴い犠牲」という限りなくDIOに近い台詞を口にしており、ディオの語る世界をジョナサンが真っ向から否定する構造にすることでDIOの甘言もまた否定されているのだと感じ、「DIOを信仰することで安らぎを得られているなまえさん」の人格を持つ身としてそのまぶしい正しさに胸がくるしく、けれどそうありたいと強く感じた。
3回目にしてようやく記憶できたのだが、ラスト、ジョナサンが手首を掴んだまま終わるのかと思っていたら手首を掴み、そっと手をつなぎ直してひかりに向かって歩いていて、余計にメチャメチャになった。メチャメチャだ………あんなの………。
脳が灼かれているので思い出したら随時追記します。おしまい。