2024年2-3月よんだ本

sugarhigh
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1月に引き続きネタバレ配慮なし、うろおぼえだったりそうじゃなかったりします。けっこうだいぶうろおぼえなので全体的にワヤワヤな感想文。すべて個人の主観です。

・傘を持たない蟻たちは(角川文庫)/加藤シゲアキ

・できることならスティードで(朝日文庫)/加藤シゲアキ

先月末に読んだ「閃光スクランブル」とあわせて3冊をわりと連続でざーっと読んだが、「傘を持たない蟻たちは」がいちばん好きな空気感だった。作者自身のことを先行してよく知っている状態で読む小説というのが個人的には新鮮で、ご本人の華やかさと根の暗い自意識とが文章から感じられる気がしておもしろかった。「傘を持たない蟻たちは」収録の「Undress」を主演慶ちゃん、後輩役ガリさんあたりで実写化してほし〜……。収録作の中では「イガヌの雨」「おれさまのいうとおり」が好き。

・さいはての家/彩瀬まる

「かけおち」「逃避行」の概念が好きなので、かけおちや逃避行の先にある家にまつわる物語にとても胸がときめいた。家と逃避行が共通のテーマなのにそれぞれの短編の読み味がそれぞれ異なっていること、収録順と時系列は必ずしも同じではないことがとてもおもしろかった~……し、どの短編もそれぞれ別個の感情でとても好き。

・マジカルグランマ/柚木麻子

マジカルニグロという概念を知らなかったので、なるほど……と思いながら読んだ。自分はディズニーランドが大好きなので、ディズニーランドにはじめて行った人が受ける感動を言語化されていることがうれしかった。個人的に主人公のことはく、クソババアじゃん……と思いながら読んでいたけれど、年を重ねてもとにかく自分本位に生きられるそのパワーこそ生き抜くためには必要なのかもなあとも思うし、愛さずにはいられないキャラクターだった。

・流浪の月/凪良ゆう

・わたしの美しい庭/凪良ゆう

凪良ゆうさんのBL作品は「美しい彼」シリーズと「おやすみなさい、また明日」を読んでいたが、一般文芸作品はいまさらよんだ。BL小説の頃から感じられた弱者、社会的マイノリティに対してのやさしいまなざし、その生きづらさを肯定しながらも過剰に美化はしない描き方が好きだなあと思った。個人的には「わたしの美しい庭」の方が好き、というか、今の自分に刺さる部分が多くて、読みながらそっとこころを撫でられているような心地になった。一度立ち上がれなくなった人に寄りそうだけでなく、その周囲の人々の苦労も描いているところ、すてきだなあと思う。

・西洋菓子店プティ・フール/千早茜

タイトルに惹かれて手にとった一冊。読みながらケーキが食べたくて仕方なくなり、翌日これはちょっと違うけど……でもケーキだから……!とスイパラに駆け込んだ。わたしはとにかく強気なギャルによわいおたくなので、「ロゼ」の「いつか、あなたの人生を薔薇色に染めるのはあたし。」という〆が好きすぎる~……。

・タルト・タタンの夢(創元推理文庫)/近藤史恵

・ヴァン・ショーをあなたに(創元推理文庫)/近藤史恵

・マカロンはマカロン(創元推理文庫)/近藤史恵

さらっと読めてとにかくごはんがおいしそうで、ありとあらゆるフレンチが食べたくて仕方なくなり、知人とフォアグラを食べに行く約束をした。「ヴァン・ショーをあなたに」の文庫版解説で「食べたい」と思わせる技術を持つ作家として北森鴻、高田郁、池波正太郎が挙げられていてへえ〜!と思ったし、本当~~にごはんをおいしそうに描くのがお上手ですてきだ……と思ったしあらゆるフレンチが食べたい。

・お探し物は図書室まで/青山美智子

・猫のお告げは樹の下で/青山美智子

・木曜日にはココアを(宝島社文庫)/青山美智子

しばらく前に気になっていた気がするな……?と手にとった本たち。やさしい物語らしいとは聞いていたが、どの本も本当にやさしく、くたびれたひとのこころにそっと寄り添ってくれる物語で、静かに噛みしめた。ほんのりと世界観がつながっているのがうれしいし、最近出た新刊も同じ世界線ぽいので、そのうちよみたいなあ。

・丸の内魔法少女ミラクリーナ/村田沙耶香

はじめて読む作家さん、表題作がいちばん好き。タイトルを見て現代を戦う女性の物語かなと思ったらちゃんと「魔法少女」をしていてすごくよかった。と思いながら、いざという時ミラクリーナとして戦うことができるのは「東京」に暮らすからこそかもな、と思う部分もあり、自分は首都圏に暮らすOLだから共感もありよかったな……と思えたが、そうではない人がどういう感想を抱くのかが気になるなあと思った。

・夏と花火と私の死体(集英社文庫)/乙一

そういえば読んでいなかった!わかっていたが本当におもしろいし、これをデビュー作でたたき出してくる才に感服する。

・TSUGUMI(中公文庫)/吉本ばなな

高校生の頃読書感想文の課題図書に指定され、開始数ページで合わんな……と思い読むのを放棄した作品、吉本ばなな作品をよんでいた波に乗って再読。改めて読んでもキッチンやアムリタほど刺さらなかったなと感じたので、当時のわたしの合わんな……という感覚はけして間違ってなかったかもなと笑いつつ、「夏の思い出」の概念をこうもみずみずしく言語化できるのか~……と感動した。

・おとぎのかけら 新釈西洋童話集/千早茜

西洋童話を現代日本風にアレンジした短編集、よくあるモチーフではあるが現代日本への落とし込み方と原典にもある毒の含ませ方が上手でため息がこぼれた。「迷子のきまり(ヘンゼルとグレーテル)」と「凍りついた眼(マッチ売りの少女)」が好き。

・鎌倉駅徒歩8分、空室あり/越智月子

・ツバキ文具店(幻冬舎文庫)/小川糸

特に意識していなかったが、鎌倉での生活を題材にした本をしばしば読んで鎌倉に行きたくなった。

・常識のない喫茶店/僕のマリ

読みながら噴き出しそうになってしまう部分がたびたびあり、こんなにおもしろい職場があっていいのか??と笑ってしまった。創作なのか?と思いきや実話らしく、本当にこんなにおもしろい職場があっていいのか???

・哀れなるものたち/アラスター・グレイ 高橋和久訳

2月のマイベスト。映画を観てから原作も読みたくなり図書館で借りて読んだが、ひさしぶりに「あまりにおもしろくて読むのを止められずに完走する」本だった。序盤は映画を思い出しながらふうん……とよんでいたし脚注もななめ読み程度だったのに、中盤以降あまりにおもしろくて読み終えてから放心していた。ヴィクトリアが「触れ合いなく添い寝がしたい」と言っていることを性的ヒステリーと称していたこと、将軍が娼館の太客だったと明かされて物語が一度閉じること、ベラが避妊の技術を多くのひとに広めたこと、小説で好きだと思った部分が映画では基本カットされていることに気づき、え、映画がなければそもそも小説もよんでないんだけど……小説の方がおもしろ……いやわたしは小説の方が好きで……とモダモダした。

・風が強く吹いている(新潮文庫)/三浦しをん

そういえば読んでいなかった!その2。現実的にそんなのありうるのかとか、こんなにうまくいくのかとか、そう思うのも無粋なくらい熱い少年漫画のような作品だった。王子がおたくで運動音痴らしいということだけは知っていたけれど、その他みんなキャラが立っていて魅力的でおもしろかった~~メディアミックスされまくっているのも納得です。

・ねじまき片想い 〜おもちゃプランナー・宝子の冒険〜/柚木麻子

わたしは不器用だけど安定感と包容力のある男が好きなので、ままならね~恋をしている小説を読むたびなんでそんな男を選ぶ!???になることが多々あることに気づいてきた。シスターフッドを描くのが上手だなあと感じる作家さんが、同時に女性間に生まれる性愛の存在も描いてくださること、それをまったく別物の感情として描かれていること、いいなあと思う。

・我が手の太陽/石田夏穂

おのれの手で自在に操ることのできる高熱と身につけた技量のダブルミーニングで「我が手の太陽」なのかなあと思い、タイトルのセンス、良~……。自分の能力を認めているが自分の仕事を軽んじている(自己肯定力は低いがプライドは高い)主人公がふとしたきっかけから崩れていくお仕事小説、色々と刺さる部分があって読んでいてつらい気持ちになった。読書メーターを見たら「我が友、スミス」から石田さんの作品に入った方が多いようなので、そちらもそのうちよみたい。

・回樹/斜線堂有紀

宇佐崎しろさんの表紙に惹かれて手にとった本。生と死についてのSF短編集、おもしろかった~!今まで読んだ斜線堂有紀作品の中でいちばん好きかもしれない。生と死にまつわる設定がどれも好み、表題作と「不滅」が特に好き。

・腹を空かせた勇者ども/金原ひとみ

「ミーツ・ザ・ワールド」がおもしろかったので他の金原ひとみ作品もよみたいなあと思いながらジュンク堂にコーナー展開されていた中でいちばん気になって手にとった1冊。コロナ禍での中学生~高校生の日々の物語、主人公の情緒の発達にともなって地の文の語彙力が上がっているのが明確にわかって、ぶ、文章がうま~い……と感嘆した。スマホが当たり前にある中高生の生活は自分にとってファンタジーなのだけれど、ああ、こういう感じなのかあと納得できて、これを読んだ中高生、中高生に接している人たちがどういう感想を抱くのかが気になるなあと思った。

・この世にたやすい仕事はない/津村記久子

・とにかくうちに帰ります(新潮文庫)/津村記久子

津村記久子作品を読んだことがないなあと思い、図書館でてきとうに選んだ本たち。「我が手の太陽」でも思ったが、仕事に愛着を持ちながら周囲の声によって仕事に対する感情が複雑になっていくさまを描かれると読んでいてつらい気持ちになるのだと気づきを得て、つらめのお仕事小説は今のわたしには向いてないんだな……と思った。どちらの本も描かれる人たちの「生っぽさ」、本当にいそう、ありそうと感じられる空気感がめちゃいいな~と思い、他の本もよみたいきもち。

・恋文・私の叔父さん(新潮文庫)/連城三紀彦

「擬似家族」「共犯者」が創作のサビの知人に勧められて読み、「擬似家族」「共犯者」の物語すぎてウケてしまったし、「共犯者」はわたしのサビでもあるのでわたしもとても好きだった。「私の叔父さん」に登場する「叔父さん」、サブカル女の思う理想の叔父さんすぎる……とふるえたし、こういう湿っぽくてほんのりしあわせだけどさびしい物語、書きてえ~……になった。「紅き唇」がいちばん好き。

・この本を盗む者は/深緑野分

「物語」がモチーフになっているファンタジー、アニメ映画にしたらめちゃめちゃ映えそうだなあ~と思った。真白やひるねおばさんの存在、創作するものとしては夢みたいな話だ……とドキドキした。

・優しい暴力の時代/チョン・イヒョン 斎藤真理子訳

河出書房新社公式アカウントの文庫版宣伝ポストから気になって手にとった1冊。タイトルの通り、わかりやすい暴力はなく、けれど時々刺すような痛みに襲われる日々の物語、今の自分では読んでいてすこしくったりしたけれど、読みながら色んなことを考えさせられる。「ずうっと、夏」がいちばん好き。

・キッチン・セラピー/宇野碧

「正しさ」に対して強迫観念的な感情を抱いているニンゲンなので、「カレーの混沌」は読んでいて身につまされた。「完璧なパフェ」は読んでいてワンオペ育児をする友人たちに想いを馳せてしまったし、母なる友人たちと完璧なパフェを食べに行きたくなった。そんなにうまくいかないよというきもちと、やさしい物語に対するありがたさのどちらもを感じた。

・あつあつを召し上がれ/小川糸

・うしろむき夕食店/冬森灯

・今日のごちそう/橋本紡

「キッチン・セラピー」とあわせて、図書館で何の気なしに手に取ってる本たち、本当に食事にまつわる小説ばかりだな……とウケた。「うしろむき夕食店」は「縁結びカツサンド」の気配を感じてニコ……とした。

・赤い月の香り/千早茜

前作のふたりのその後の話が読めると思いきや違うんかいと思いきや一香との進展してないその後も知られてよかったしやっぱり新城が好き。浮世離れした朔にすくわれてほしいきもちがあり、シリーズでまた続きがよみた~い……。

・神と黒蟹県/絲山秋子

ジュンク堂の文芸コーナーでオススメされていて手にとった1冊。さまざまな架空のものと実在のものが入り混じった世界観、当たり前にそこにいる神の結末、ぜんぶが狐につままれたような物語でめちゃめちゃおもしろかったし森見登美彦作品が好きなひとに勧めた~いと思った。

・をんごく/北沢陶

ツイッターで紹介ツイートを見て気になった1冊。その他のホラー作品にも通ずるけれど、怪異をテーマにした物語を生む人たちの「怪異」を生み出す力はすごいな……と感じた。タイトルや表紙から受け取る恐怖の印象よりもミステリに近い手触り、登場人物がみんな魅力的でおもしろかった。

・チワワ・シンドローム/大前粟生

弱くありたい、守られたい、肯定されたい、作中で描かれる人たちのあり方がすごく「今」を感じて、令和の小説だ~!と思った。自分は強くなりて~!と思う側のニンゲンなのだけれど、平成のニンゲンだからそうなのか、令和の中高生がこの本を読んだ時に弱くありたいと思うひとに共感し得るのかが気になるなあと思う。

・あなたはここにいなくとも/町田そのこ

どの物語も「年を重ねた存在」に対して肯定的で、けれど「黒い穴」のように毒のある物語もあって、好きだなあと思ったし、カバー裏のエッセイに町田そのこさんのひととなり、物語に込められた他者に対する愛情を感じてとてもよかった。

・レイアウトは期日までに/碧野圭

特殊装丁大好き同人おたくなので作中で話題にされる装丁やフォントの話題をめちゃめちゃ楽しんで読んでいたのだけれど、むしろそゆ人種以外にはややニッチではないか?と思いながらわたしはとても楽しかった。自分にとって装丁家やデザイナという職種はファンタジーに近い存在(自分にとってリアリティがない)なのでお仕事小説でも楽しく読めるのか……という気づきを得たし、わたしはごちゃごちゃしたデザインばかりを好みがちなのだが、シンプルなデザインについて理由を明文化して説明されている部分になるほどなあ~……とすなおに思えてよかった。

・ホットプレートと震度四/井上荒野

ま~た「食」の短編集!まとめてみるとしみじみ食にまつわる短編集ばかりを読んでいる。「コーヒーサーバーの冒険」がいちばん好き。幼児視点の物語だからこそのかわいさとおとなたちのとげのある描写のバランスが好きだなあ。ごはんを作る描写がどれも凝っていて、きちんと料理をするひとの書いた小説なのだろうな……と思った。(料理をする描写のためにクックパッドを検索するニンゲン並感)

・あかるい花束/岡本真帆

サイン会に際して前のめりで購入した岡本真帆さんの第2歌集。1作めよりもかなしみや喪失感を伴う短歌が多いように感じて、けれど日々を生きてゆくひとの歌だなあ、好きだなあ、と思った。特に好きだった5首を引用。

ただしくよりたのしく歩く 光ってる水が見たくて すこし小走り

どの道を選んでいても不安という悪魔にあうの?なんだ、よかった

だいじょうぶ 言い続けたら少しずつ分からなくなる柔い輪郭

ラブソング以外の愛もあるんだよ 鳩になってもきみが分かるよ

魔法かもしれないきみに手を振ったあとのひとりがなんか明るい

以上、2月に33冊、3月に10冊、計43冊。たいへんよくよみました。

2月は本当に情緒がおしまいで本を読む以外の行為がほぼできず、3月は情緒がだいぶ持ち直して原稿やら何やらをしていたおかげで本はろくに読んでおらず、あんまりにもわかりやすくてオモロいな~と思う。4月はどうなんでしょう。

おしまい。

@sugarxx
とりとめないめも