2023年に引き続き2024年もよんだ本の感想めもを残すぞ~とフンワリ考えていたが、明らかに2023年よりもハイペースで読書をしており、これは……こまめに残しておかないと絶対に記憶がワヤワヤになる……!と確信したため(なおすでにワヤワヤ)まずは1月分をまとめるとします。ネタバレ配慮なし、うろおぼえだったりそうじゃなかったりします。すべて個人の主観です。
・東京奇譚集/村上春樹
年末から後述の「献灯使」を読んでいたのだが、するする読めるのになぜかまったく読み終わらん……何……!??と困惑し、小休止で読んだ短編集。村上春樹作品は中学生の頃「アフターダーク」を読んだきり、いまいち肌に合わんな~という印象だったのだが、短編集の方がだいぶとっつきやすかった。「偶然の旅人」がいちばん好き。
・献灯使(講談社文庫)/多和田葉子
「雪の練習生」を勧めてくれた知人がこっちもオススメと挙げてくれた短編集。短編集ではあるが世界観は共通している連作短編、大災厄に見舞われたいつかの「日本」の話を年末から年明けにかけてよんでいたら震災が起きてぞっとした。「動物たちのバベル」がいちばん好きで、「雪の練習生」同様動物たちの視点から見た人間という描き方のつめたさ、一線を引いているように感じる皮肉さが好きだ~……と噛みしめた。ニンゲンについて語る動物たちがたびたび「それって変態的じゃない?」と指摘するのが皮肉で大好き。表題作、鎖国した日本を淡々と描写する地の文にずっと主人公の「怒り」がにじんでいて、淡々とした文章だからするする読めるのにずっと何かが重たくのしかかるように感じて、文章が……ウメ~……。
・アッコちゃんの時代(新潮文庫)/林真理子
わたしはファム・ファタルの概念が大好きだしファム・ファタルにくるわされる側のニンゲンであることを自負しているおたくなので、ファム・ファタルの視点から見ると周りが勝手にくるっていって自分はそれに付き合ってあげてるだけの感覚なんだ……!とドキドキしてしまった。2023年に「痴人の愛」を再読した際、ナオミは所謂「悪女」ではあるがこれは男の視点で見ているからであってえ……ナオミに振り回されているようなツラで徹頭徹尾ナオミ(女)を「モノ」扱いして下に見てるのが透けて見えて気に食わなくてえ……とモダモダしていたのだが、女性の描くファム・ファタルの視点の物語を読むことで自分の中でナオミ像がはっきりした気がしてうれしく思った。
・うるさいこの音の全部/高瀬隼子
作家の人生と著作を結びつけて作家・作品を論じる学科に所属していた身であり、文章から感じる作家の人生や生活の匂いを好むおたくとしてなんだか身につまされるものがあった。相手の反応を気にして言葉を選ぶひと、そうして顔色を窺われることに対していらだつ・傷つくひと、どちらにも共感できてウワー!と思ったし、自意識のどつぼにはまっていく朝陽の姿に胸のあたりがひりひりした。描かれている感情はずっと困惑や苦しみなのに、一方で根柢の部分に他者への怒りがずっとじわじわ感じられて、朝陽が自意識によって抑圧しているであろうその感情が伝わってくるのがすごいな……と思ったし、ラスト、「拒絶」という形ではじめて感情を発露する朝陽になんとなく救いを感じた。
・残穢(新潮文庫)/小野不由美
本棚に置いておくのも嫌なほど怖いという評判にずっと二の足を踏んでいたが、図書館で文庫版に遭遇したのでまあ……借りて読むならいいか……と読み、手元に置いておくのが嫌すぎて読み終えてソッコー返却に行った。決定的な「何か」がないままこんなに「嫌」なの、何……!???図書館で借りたことによって「あらゆる人の手を介した」形で作品に触れたことにウエーンとなったが買って本棚に置いておくのも嫌だしウエーン……。映画未見なのでそのうちみたいと思う。
・ショートショート・BAR/田丸雅智
さくさくさらっと読めたがさくさくさらっと読んだせいで特に印象になく、感想めもも残っておらず、無念……。
・シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱/高殿円
作中たびたび登場するパンケーキがあんまりにもおいしそうすぎてパンケーキを食べたい欲に身もだえ転がり、ローソンのパンケーキでどうにか手を打とうとしたもののまったくおのれを鎮められずその後バターたっぷりパンケーキを食べに行った。百合となってもまた原作とは異なるおいしさとなるシャーロック・ホームズというキャラクター、本当に魅力的すぎる……。
・かがみの孤城/辻村深月
辻村深月作品が好きな友人にいちばん好きな本を聞いて読んでみた1冊。「大丈夫。大丈夫だから、大人になって。」というラストのアキの心情がこの本に込められたメッセージなのだろうなあとじんとした。わたしは大人になった今だから中学生たちに対して同じように思えるけれど、中学生の頃にこの本を読んだら受け取り方は違っただろうな……と思うし、本の世界という「お城」に逃げることで自分を守っている子たちが、このことばにすくわれていたらいいな……とひっそり祈った。アニメ映画映えするだろうな~この映画もそのうちみた~い。
・アムリタ(新潮文庫)/吉本ばなな
「かがみの孤城」を勧めてくれた友人が、人生でいちばん大切にしている本と言って勧めてくれた本。上巻は好きだなと思ったりなるほどなと思ったりしたことばをちまちまめもしていたのだが(「ある種の愛が家庭を存続させるのに必要、なのよ。愛ってね、形や言葉ではなく、ある一つの状態なの。発散する力のあり方なの。求める力じゃなくて、与えるほうの力を全員が出してないとだめ。家の中のムードが飢えた狼の巣みたいになっちゃうのよ。」)、下巻はとにかく「生きてるそのままだけでいい」というメッセージがひしひしと伝わってきて、きしめん(かなめ)さんからの手紙で、生きてるだけで何にも問題ないことあるんだって思った、と届いたシーンで、そうなんだあ、生きてるだけでいいんだあ、とほろほろ泣いてしまった。
くだらなく重く思える日常を大切にしてほしい。自分のすることのなかで、そうではないことにいかにひきつけられても、自分に自信を持たせられることだけに同意してほしい。
(中略)
日常にはおちはなく、どのような祝いの夜も明けるし、どんな悲しいことも長くは続かない。食べたり、飲んだり、出かけたり、寝たり、風呂に入ったり、そういうことの力は憎んだり、愛したり、出会ったり、別れたりするより強い気がする。
文庫版あとがきで吉本ばななさんも仰っている通りおちのない日常の話で、でもだからこそやさしくて、こころのぺちょぺちょになってる部分をそっと撫でてもらえたような心地になれて、読み終えてからなんだか呆然としてしまった。引用したあとがきの文章を何度も読み返しては自分に言い聞かせているし、作中で語られていた人生のチェックポイントは自分の中で大切にしたいなあと思った。
「食べ物おいしい? 食べ物の味を、ちゃんと感じてる?」
「じゃあね、もうひとつ、朝起きると楽しい? 一日が楽しみ? 夜寝るとき、気持ちいい?」
「友達が前から歩いてきます。楽しみ? 面倒? 目に映る景色がちゃんと心に入ってきますか? 音楽は? 外国のことを考えてみて。行きたい? わくわくする? それとも面倒?」
「明日が楽しみですか? 三日後は? 未来は? わくわくする? 憂鬱? 今は? 今をうまくやってる? 自分のこと気にいってる?」
(中略)
「これはねえ。」
母は大きな目で弟を見て笑った。
「私がおじいちゃんから教わった人生の秘伝、チェックポイントなの。」
(中略)
「困ったときに、自問自答すればいいの?」
私はたずねた。
「そうそう、でも、自分にうそついちゃだめだよ。だめだ、違う、面倒だ、って答えでもいいの。毎日、寝る前に目を閉じて『本気で』きくのよ。だめな日が何日続いてもたずね続ければいいの、その普通の勇気が、ある中心を作り始めるの。宗教みたいだけど、生きていくうえでひとつくらいはそういうのが必要なのかもね。」
母は言った。
「でもきっと、聞いてりゃいいってもんじゃないのよ。聞いてることに安心して、全体のレベルがどんなに落ちても気づかなくなっちゃうのね。暗い声で、大丈夫、大丈夫、って言い続けてもしかたない。自分にうそはつけないものね。」
・王妃の帰還/柚木麻子
女子校!!!!!!!!すっごい、テンプレート・女子校すぎて実際こんなことある????と感じた女子校出身のニンゲンだが、思春期の女子の抱くほんのりとした劣等感や憧れ、ふとしたことで通じ合ってしまう仲やどうしたって断ち切れない仲、いらだちも焦りもいとしさもぜ~んぶわかりすぎてすご~い……と思った。
・少年の名はジルベール/竹宮惠子
・一度きりの大泉の話/萩尾望都
おふたりの間にあったできごとについてはインターネットのうわさでほんのりと知っていたが、改めてそれぞれの視点で描かれた文章を読んでハワ……となった。こういう言葉で端的に形容するのも適切ではないのかもしれないが、萩尾望都さんって本当に「天才」なんだな……と感じ、「天才」に対してつよい感情を抱くおたくとしてあらゆる感情で身もだえた。それはそれとして、萩尾望都さんの描かれていた「親しみを抱いていた相手との関係にひびが入った時の感情表現」があまりに「理解」りすぎて具合が悪くなった……。
・十角館の殺人 <新装改訂版>(講談社文庫)/綾辻行人
ミステリ好きが選ぶベスト作品にゼッテ~入ってる怪物ミステリ、いい加減読むぞ!と読み、もののみごとに叙述トリックにウワーーーー!!!!!!となった。これ映像化するんですか?どうやってするんですか?
・推し、燃ゆ/宇佐見りん
所謂推し活話は事実は小説より奇なり、フィクションを読むよりも現実のおたくの方がよほど突き抜けていると思っているけれど、「人並み」に生きることが難しいひとの「人並み」に世間とつながる唯一のすべとして「推し」が描かれていて、「推し活」というフィルターを介して「人並み」に生きられない生きづらさを描かれていることがめちゃめちゃ興味深かった。バイト中の主人公の思考描写、「普通」のひとが「普通」に処理する情報を処理しきれないさまが明確に言語化されていて、端々の主人公の生きづらさの描写に胸がぐうっと詰まるとともに、「推し、燃ゆ」る、イコール世間とつながるすべを断たれた主人公が投げ捨てた綿棒(→それまでの自分を支えていた脆い支柱のようなもの)を這いつくばって拾うさまにひとかけらの希望を感じた。余談:図書館で見かけた本作の中国語訳タイトルが「偶像失格」でへえ~……と思った。
・ぼぎわんが、来る/澤村伊智
モキュメンタリー作品じゃないホラーでオススメのホラー小説として紹介されているツイートを見てよんでみた1冊。映画「来る」は鑑賞済だったので登場人物はフンワリ把握していたが、映画よりわかりやすくカタルシスがあってめちゃめちゃおもしろかった~!というか物語の主幹部分が映画だとワヤワヤになってるんだな……いや映画は映画で別物としておもしろかったですが……。
・閃光スクランブル/加藤シゲアキ
著作が直木賞候補に選出されていたことを受けて既刊を紹介している該当担のお題箱を見てよんでみた1冊。個人的に村上春樹作品に近い手触りを感じた。2月に入って別の著作を2冊読んだので感想はまとめて追々。
・ゴールデンタイムの消費期限/斜線堂有紀
文庫版解説を桜庭一樹さんが寄せられているのを見かけて手にした1冊。元・天才小説家の名字が「綴喜」なの、スゲ~呪いじゃん……と感じていたが、綴る喜びを名に冠する人物に対してやさしいエンディングでほっとした。「天才」につよい感情を抱くおたくなので自分の才能を正しく理解する「元・天才」たちの描写に脳汁がドバドバ出るのを感じ大変だったし斜線堂有紀さんの才をしみじみと感じた。
・料理なんて愛なんて/佐々木愛
自分がまったく料理をしない・できないニンゲンなので主人公にメ~チャ共感しながらなんでそんな男にこだわるんだよ……なあ………おい………ままならねえ……………とモダモダしながらよんだ。好き、好きになりたい、好きになれない、という人間の感情の面倒くささが丁寧に描かれていて好きだ~と思った。
・透明な夜の香り/千早茜
朔のビジュアルをずっと草太さん(すずめの戸締まり)で思い浮かべて読んでいたし一定数ツボるおたくいるでしょ………と思ったしわたしは新城が好きだし……。マーガレットと花とゆめの間らへんの少女漫画的な空気のある物語、静かでひんやりした匂いを感じて装丁まで含めひとつの作品として素敵だった~。続編もよみます。
・縁結びカツサンド(ポプラ文庫)/冬森灯
パン屋さんに向かう道すがらよんでいたのでウキウキしながらパンを食べたし読み終えてからずっとパン屋さんのカツサンドが食べたい……のきもちにとらわれている。
・ミーツ・ザ・ワールド/金原ひとみ
「死にたいキャバ嬢と推したい腐女子」という帯文を見て手にとった1冊、2024年1月によんだ本のマイベスト。由嘉里の感情が入った時の語り口があまりにもおたく早口すぎて、活字でこんなにおたく早口を感じることある???と大ウケした。ひとそれぞれに思い描く「幸せ」があり、相手を想うからこそその「幸せ」の形に成ってほしいと思うけれど、思い描く形が違えばその愛情は押しつけになる、ということを言語化されていて、やさしさ・愛情ゆえの行き違い、やりづらさを試行錯誤して認めてゆこうとする物語があることに多様性の希望を感じてうれしく思ったしいろんなひとによんでほしい~と思った。(けど、由嘉里のおたく早口がおたく早口すぎて読みづれ~!とウケたので、むずかぴ……)
・これでもいいのだ/ジェーン・スー
・きれいになりたい気がしてきた/ジェーン・スー
「かがみの孤城」「アムリタ」を勧めてくれた上述の友人から同じくジェーン・スーさんの著作を勧められ、ひとまずと図書館で借りてみた2冊。今の自分に気力が足りていないので、ジェーン・スーさんの生命力のまぶしさにくったりしてしまう部分もあり、もうすこし元気な時によんだらたぶんもっと好き!!になったろうな……と思いつつ、自分を肯定しながらすこやかに生きるひとりの女性のエッセイとしてとても好きだな~と思った。ラジオやポッドキャストも複数の友人から勧められているのでききたいきもち……。
・死神の精度(文春文庫)/伊坂幸太郎
12月に会った友人に勧めてもらってよんだ1冊。千葉はジョン・ウィックのキアヌ・リーヴスのビジュアルを想像しながらよんでいたが、実写映画では金城武が演じたと知りなるほどな~と思った。死神の人外なのに人間くさい描写がとても好きだ~。(「ミュージック!」て反応しちゃうとこ、いとし~)
以上、計24冊。たいへんよくよみました。
「紙の本で活字を読む」行為は正直平常時の自分の生活の中で優先順位は低めというか、情緒がましになって夢小説をかきたい!ツイッター!夢小説をよみたい!ツイッター!ソシャゲ!ツイッター!の生活に逆戻りすると頻度は落ちると思うのだが(ツイッターの頻度を落としてください)インプットから得た感情のアウトプットはしていきたいなと思います。ゆ~て2月も情緒が終わっているのでモリモリ本を読んでおり、2月分も記事にまとめる予定です。
おしまい!