2024/01/24の日記 愛知の美術館へ行く

スギ
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休日出勤をした振休があったので、愛知県碧南市にある碧南市藤井達吉美術館へ行くことにした。一番住んでいる地域から近い(が、当日一日休み、かつ翌日も休みである方が望ましい地域の)美術館で「顕神の夢 ―幻視の表現者― 村山槐多、関根正二から現代まで」という前々から気になっている企画展が催されていたからだ。

愛知県は名古屋周辺まではライブで行ったことがあるが、碧南市は今回がはじめて。往路はぷらっとこだま、復路は近鉄火の鳥を利用した。前日から寒波が来ると天気予報で言っていたとおり、往路では京都を出たぐらいで雪が見え始めた。名古屋に近づくほど速度を落として走り、20分遅れぐらいで名古屋に到着した。即名鉄へ乗り換えようと思ったが、気が変わり新幹線のホームできしめんを食べた。平べったい麺の満足感と名古屋感を速攻で味わう。

名鉄に乗り換えて一時間ほどかけて碧南駅へ向かう。ウンベルト・エーコの「小説の森散策」という文庫本を持ってきて新幹線の車内でも読んでいたが、ちゃんとわかんないところを読み飛ばさないで読まないとだめな本だな…と気づいたため、ノートを取りながら冒頭から読み直した。すでに通勤ラッシュも終わって座る場所には困らないような空き具合だったのでノート片手の読書もしやすくてよかった。

碧南駅から美術館までは徒歩約十分ほど。名古屋に着いた時点で積もらない方の雪が降っていてこの地域でもそうだったので、迷うようなことのない簡単な道でありがたかった。雪には全然慣れていないので、雪って傘差した方がいいのか?と不安になりながら風にあおられながら歩いた。

(「顕神の夢」展示に限らずだが)ちゃんと名を残してるような人の作品って、生で見ると存在感に圧倒される。画像データや図録の写真とはまず色が違うし、作品の大きさ、展示されているときの照明で見る濃淡、油彩の艶、重ね塗りした絵の具の盛り上がり、ミクストメディアの質感の違いなど、一枚の絵一つの立体でも情報量がとても多くて、それらは目の前に立たないと得れないものだ。あと明治以前の作品が展示されてると、この作品を後世に残そうとした人がいたんだな…と思ってジーンとしてしまう。別に時代をそんなに遡らなくても作者が存命でない作品だって、命は失われてもこんなに遺るんだ…と不思議な気持ちになる。美術館ってやっぱり行けるなら行った方がいいな。

「顕神の夢」のコンセプトは下記のとおり。

表現者たちは、自己を超えた言い難い「何か」への憧れや思慕から、その「何か」をとらえるべく身を焦がす思いで制作します。それは、宗教の根幹をなす信仰心の発露ともいえます。ときに土俗的な印象を与える作品は、根強く残る心情の証しです。本展は、約120点の絵画・彫刻作品を通して、今までモダニズムの尺度により零れ落ち、十分に評価されなかった作品に光をあてる一方、すでに評価が定まった作品を新たな、言わば「霊性の尺度」で測りなおし、それらがもつ豊かな力を再発見する試みです。

(「顕神の夢 ―幻視の表現者― 村山槐多、関根正二から現代まで」碧南市藤井達吉美術館)https://www.city.hekinan.lg.jp/museum/event_guide/kikakuten/20106.html

もちろん見えた「何か」はそれぞれの作者ごとに違うのだが、そのために場所によっては箸休めのない重箱みたいなハイカロリーな展示だった。あと雪降ってたので頭痛があり、昼食までは見ながらおもしろ…しんど…だった。以下気になって立ち止まった展示物を記す。写真撮影不可なのでぼんやりとしたイメージは図録か検索で見てほしい。生で見たほうが良いと言った舌が乾かぬうちにそんなこと言う。

三輪洸旗「スサノヲ顕現」

岡本天明の「三貴神像」を見た上で描かれた作品らしい。この作品もすぐそばに展示してあった。黒いキャンパスの中にボンヤリと龍のような姿が浮かんでいるが、暗闇でなにかを見たときのように形はよく掴めない。龍を見ようと目を凝らせば凝らすほど黒い背景の濃淡がもやもやと蠢くようで、目が離せなかった。

河野通勢「裾花川の河柳」

筆致が残るタイプの絵で、しかもその筆致のうねりが巨大すぎないからこそ、空の雲の形を含めて「風の強い日の一瞬」に見える。「何か」がいるタイプには見えなかったけど、何でこんなに"在る"んだろう…と不思議になってよく目を凝らした。

内田あぐり「ながれⅠ」「ながれⅢ」

みどりがかった川の流れの中に落ちる瞬間ってこんな感じかな。縦長のキャンパスには濡れたような艶のきらめきもあり、筆致が残って実際とは全然違っていたとしてもキャンバスの中に取り込まれるような動きがあった。

石塚雅子「彼方」

こんな絵を買えたらいいな、とこの展覧会で唯一感じた。暗闇の中で火の玉と闇の玉が同時に存在して爆ぜている。油彩で絵の具をよく薄めて描いたんだろうなと思われる画面のつやつやして透明感のある感じが、手元に置いて愛好できたらいいなと思わせる。まあ大きすぎてどこから部屋に入れんねんとはなるんだが…。

藤白尊「小さな渦群」

大きな画面一面にカラフルな原色の小さな丸や光が密集し、時おり渦を巻いているようにように見える。左右には藤白の同じような趣の他の作品も展示され、作品の大きさも相まって色彩の圧がある。展示の文言は理解できなかったが図録を買ったのでおいおい読もう。

振り返るとずっと見てたら目が疲れそうな作品が好きな傾向にある。

美術館併設のカフェで昼食をとる。2辺がガラス張りで、曇っていても外の光をよく取り入れる明るいカフェだった。カレーセットを食べた。

一皿の半分を玄米ご飯と大豆ハンバーグ・カレーが、残り半分にサラダが添えられているランチセットの写真。 水とお手拭き、カトラリー、閉じたメニューも周囲に写っている。

当日中なら何度も展示室に出入りして良い(そのつど半券を見せる必要はある)ため、もう一周していろいろな絵の前で佇みいいな〜と思ってから図録を買い、ガチャガチャをする。ガチャガチャは藤井達吉の描いた図案がシルクスクリーンで入っている薄手のコットンのサコッシュが何種類か入っている。美術館の日常使いできそうなお土産が好きだ。

15時過ぎぐらいに美術館を出て、この展覧会とコラボしたスイーツがあるレストラン&カフェK庵へ向かう。このときも雪は断続的に降っていて、風が強いとより降雪量が増えたように見えた。カフェは平日のランチタイムも過ぎていたし、好きな席を選ぶことができた。

手前にネスミスさんを模したキューピーとテツヤさんを模したコーヒー豆のアクリルが入ったケースが、後ろにみりんアイスが上に乗った二層のプリンが写っている

どうやってもプリンにピントがあわないため、諦めて小さいたちをメインに撮った。

かためで二層のプリンの上にみりんアイスが乗っている。上から抹茶とラズベリーのソースをかけることができる。みりんアイスはみりん感はあまりなかったが、ラズベリーソースとよく合っていておいしかった。二層のプリンはどちらもかためで、下は抹茶上はノーマルっぽい味。こちらは抹茶ソースがよく合う。

丸窓から見える庭に、ソテツの木が八本生えている。葉の上には少し雪が積もっている。風が吹いて降雪の残像がうっすらと写っている。

窓から見える南国っぽい木に、雪〜。

帰りは火の鳥に揺られているうちに大阪に着いた。火の鳥のいいところは、リクライニングが後ろの席に影響しない構造になっていて、足置きもあるのに、時間が倍かかるだけでぷらっとこだまぐらいの金額で大坂と名古屋を繋いでいるところ。新幹線より南寄りの路線だからか雪の影響もほぼなかったように思う。いい日でした。

@sugika
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