出資は受けられるのか?という可能性を探っている。

sugitani
·

分かっている

Black Cat CarnivalはSNSだ。

SNSは元々出資を受けられるような性質の物ではない。というより、少なくとも日本では商売としてSNSを作ろうとする企業はまずないだろう。

まず純粋なコミュニケーションの場を提供するSNSは"利用者がまったく定着しない"という事態が小さくない確率で発生する。博打だ。

次に巨人が沢山いる。XやInstagram。

SNSはARPU(一人あたりの売り上げ)が非常に上げづらい。10円もあれば優秀なのではなかろうか? MAU(毎月のアクティブユーザー)が100万でようやく1000万/月だ。

開発費もインフラ代も馬鹿にならない。一方面を任せられるITエンジニアともなると年収600〜800万あたりが下限だ。バックエンド・フロントエンド・iOS・Androidのエンジニアの4名でチームを組むと人件費だけでも3000万/年は最低かかるだろう。もちろん他にもいろいろかかるのでリリースまでに5000〜1億円は費やすだろう。

インフラ代は利用者数に依存するが、下手に作るとMAU100万程度でも100万円/月かかってもおかしくない。

博打だし、巨人だらけだし、作るだけでも大金が要るし、運良く人が集まっても儲からないとなると、少なくとも日本では商売としてのSNSは生まれないはずだ。普通なら。

ではなぜ作っている?

"転職に際し、楽しいと思える仕事が見つからなくて悩んでいるときにBlack Cat Carnivalを作りたいと思ってしまったから"が理由だが、一家が喰っていける程度に伸ばすことはできるのではないか、という勝算はあって始めた。

  • 副業を週3稼働にさせていただいたことにより生計は成り立つ

  • 企画・バックエンド・フロントエンド・iOS開発・Android開発が一人でできる。デザインを除いて人件費がかからない

  • 安く高トラフィックを捌くシステムを作ることに関しては、たぶんとても経験がある

という特殊事情により、作ることに関しては不安はない。

勝利条件も低い

  • 大勝利条件: 一家が食えるほどの収入を生む

  • 勝利条件:赤字にならず他の仕事を探す際のPRになる

  • 敗北条件:動かすだけで大赤字になる

これならば、作らない人生を歩むより、作った人生を歩んだ方が良いのではないか?と判断したわけだ。

アンケート

冒頭でも書いたが、Black Cat Carnivalは元々出資を受けられるような性質の物ではない……と考えており、出資を募ろうとする気持ちはなかった。

5月にブラウザだけでクライアントの挙動を試せる"Black Cat Carnival Simulator"をリリースし、アンケートを募った。

iOSで起動できない、というハンデによりSimulatorを起動してくださった方は200名程度であったが、アンケートは20通ほど御回答いただいた。かつ全てがおもしろそうという評価でもあった(5段階評価で5と4が概ね半々)。

面白そうと思ってくださった方だけがアンケートを送ってくださる、というのはありそうだ、しかしアンケート率1割というのは高い。かつ記入内容を拝見させていただいても"いいねぇ!ここらへんはこうなるといいなぁ!" という思いが感じられる、前向きな内容が殆どだ。

作りながら、これめっちゃ面白くない?とは思っていたが、刺さる人には刺さる、というのを確認できてしまった。

面白いものを作っている、という実感は得られた。ちゃんとプロモーションを行い、急成長させたい、という欲が出た。

同時に、自分だけのPRでは、広めるのはなかなか厳しいということも分かった。5万円ほどX広告を運用してみたが、iOS利用者をターゲットから外した、というハンデはあるとはいえサイト来場者3300人と規模が小さかった。

大きく成長させたいのならば、一回200〜300万円の予算を投じたプロモーションを何度か、改善を重ねつつ行う必要があると感じた。

資金は潤沢ではない、大金を使うならベンチャーキャピタル(未上場企業の株を買い支援し、株の上昇益を狙う事業を行う企業)から出資を受けるほかない。

出資は受けられるはずもない…と思い込んではいるが、ダメ元で5月の結果を基にVCさんと話してみよう、おそらく門前払いだろうが…と考えた。

そして

いま色んなVCの方と話しをさせていただいている。起業家と投資家を繋ぐStartPassは大変素晴らしいサービスだ。

話してみると、やはり殆どは推測通り "厳しい…" という反応だ。利用者がつくかどうかも分からないサービスに出資するのは相当困難だろう。売り上げの上げにくさ関しても根幹に対策は入れているが上手くまわると信じるのは困難だ。

逆にものすごく興味を持ってくださるVCさんにもお会いできた。なんという幸運だろうか。

これから

まだVCの方々と話し始めたばかりで、どうなるかはわからない。

そもそも出資を受けられるとして、受けるのが幸福なのかはわからない。

受けない場合は、手元の資金でBlack Cat Carnivalを1回プロモーションし、上手く伸びなければ速やかに諦め他の仕事を探し、Black Cat Carnivalは趣味として盆栽のようにゆっくりと育てていくことになるだろう。

受けた場合は、直ぐに諦めなくても良くなる。諦められなくなる。全力であらゆる手を尽くして伸ばすことに奔走することになるだろう。刀折れ矢尽きるまで。いや、おそらく刀折れ矢尽きてもどうにかしなくてはならない。

どっちが幸福なのかはわからない。どうなんだろうね。

@sugitani
ブラックキャット・カーニバル株式会社代表 / SUGAR株式会社元CTO→現顧問 / NUNW株式会社元CTO / 株式会社FLINTERS元CTO / 株式会社ドワンゴ元ニコ生初代開発リーダー github.com/y-sugitani