お絵かき禁止の国 感想
刊行から5年経つとLGBTQついて感じること、フィクション媒体における同性が同性のことを思うことについて考えることについて、それなりに差が生じるなと感じた本だった。
というのも、主人公がBLや百合を嗜んだ中において『これらはハッピーエンドが確約されているからピンとこない。少女漫画の方がキャラクターとキャラクターのすれ違いがあり、軋轢があり、また結ばれないもの同士がいたりして感情にリアリティがあり 納得できる......』という旨を思う場面がある。
私が一番最初、この本に共感した部分はこの箇所であり、同時に読み終えてから一番苦しくなったのもこの場面だった。
何故ならもうこの世にはBL・百合とはあまり分類されない、同性愛者がすれ違い軋轢あり結ばれないコンテンツが、星の数ほ ど出回っているからだ。
ぱっと浮かんだ限り邦画に多い気がする。(エゴイストとか、最近だとぼくのお日さまとか)小説もそれなりに浮かんでくる。(一 穂ミチのここ近年の文芸書とか)
2019年頃の私ならまだターゲット層に真摯で素敵な本だったな。これと中学生の時に出会えたら少し違っただろうと思えた。
主人公の周りの友人・家族関係も、2024年にしてみれば程々にリアリティのあるものだと思う。 もちろん、厳しい人間もいれば、寄り添ってくれる仲間もいる。家族も完全な理解とはいかないが手を取ってくれる可能性だって あるし。「そういうもの」と『適当』に流してくれる者もいる。 そのような側面で見るととても真摯で優しく、素敵な本だ。
「貴方はこの先苦しむ可能性があるけれど(よ、余計なお世話...... !)でも、そうだとしても私は貴方の味方だよ」と言ってくれる優しさに救われる気持ちはきっとある。
しかしもう5年経つと、主人公とアキラの結論に『児童文庫で』『これが同性間の色恋沙汰のリアリティですよ』と出してしまうのはどうしても悲しいし、 どうしても心持ちがシオシオしてしまう気持ちが勝ってしまった。
大きな偏見もあるが、そもそも中学生の色恋がきれいに成就することなんて、宝ぐじとか大穴三連単当てるより厳しい世界だと思っている。
それでも、そうだとしても、もうそろそろ『大丈夫だよ』『きっと叶うよ』と言ってくれることが少なくとも、最低でもフィクションの中でくらい当たり前の世界になってくれないかなと願うばかりだ。
せめてあと5年先に、叶った瞬間「それってBLや百合だよね?」と言われない世界と本を望むばかりだ。
おまけ
そもそもBLとか百合的な言葉が当たり前のように媒体として、しかも児童文庫に出てくることにおいて私は児童文庫たるものを舐めていました。こんなにキャッチーな存在になっていたんですね?!と反省の意を覚えたが、それはまた別の話とする。
この話を読みながら先日大学の同期と「同性愛者がシンプルに外野と相互(不)理解を得て、その者たちに向けてハッピーエン ドを迎えるコンテンツって少なすぎるよね」という話をしたのを思い出した。
私は今までそれらに対して「まぁもう、仕方がないっ スよね」という感覚で見ていたので、新鮮な気持ちでどうなのだろう......という話をしていた同期に最初ビックリした。
この時彼女とはエブリシング・エブリウェア・オールアットワンスの話をしたが、私はこの映画を犬がひどい目に合うシーンで爆 笑したことしか覚えていなかった。
これと近いところに障害者の色恋沙汰も含まれるよなと感じている。
上記にせめてあと5年先に〜と話をしたが、私はジョゼと 虎と魚たちのアニメ版を見て新鮮にブチギレた覚えがあるので、今これを打ちながらどの面が何を言うんだ......とも思ってしまった。