8月の本の話

sui
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公開:2026/4/25

前回装丁をまとめたときから1年以上経過していてとても驚いてしまったのですが、なんやかんやで更新していない期間に4冊本を作っていて自分のことなのに元気だなあ…としみじみ思ってしまいました。

ゆっくりペースになってしまいますが、去年の8月から今年の3月までに出した本を今後1冊ずつ前と同じように記録にまとめて振り返っていこうと思っていますのでもしご興味がある方は読んでいただけたらとても嬉しいです。

それでは去年の8月に出した本の装丁の詳細です。

『巡り巡り巡る』| B6 | 110P

【本の詳細】

▶︎表紙用紙:ミランダ 170kg スノーホワイト

▶︎本文用紙:モンテシオン 81.5kg

▶︎遊び紙:てまり 銀白(前後同じ)

▶︎特殊加工:本文単色刷り(グリーン)、マットPP(※初版)

▶︎印刷所:おたクラブ様

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【ブックケースの詳細】

▶︎ケース用紙:高透明フィルム300ミクロン(RGB印刷+白印刷)

▶︎特殊加工:箔押し加工(ジャングル透明)

▶︎印刷所:Print-ON様

🥷🥚にハマってから最初はこんな本が出せたらいいな…とずっと頭の中で考えていたのものを本としてしっかりと形にできたので去年完成したものを見たときに飛び上がるほど嬉しかった記憶があります。新しいジャンルで最初に出す本ってすごく思い出深いものがあるな…とこの本を作ったときに思いました。

最初にキャラクターが普段身に纏っている服の色で馴染み深い「緑」をメインカラーにした本が作りたい!というところから始まり、そこから去年の5月に旅先で撮った写真から思いついたことをベースに装丁内容を練っていってなんとか一つにまとまった段階で装丁仮案を作り、表紙イラストでずっとお世話になっている露さんに共有しました。

覆い茂ってる植物の隙間から人物たちを覗いているような感じにしたかったので人物と植物は別々の素材に印刷したいと思い、色々考えてブックケース仕様の本にすることを決め、露さんには二人だけしか知らない秘密の場所で楽しく話をしている光景のイメージでイラストをお願いしました。

そしてブックケースの素材は本を入れたときにうっすらと本のイラストが透ける感じにしたかったので透明フィルムに印刷することにして、表紙に使う紙についてはずっと二人の中できらきらと輝いている思い出というイメージからそこまで主張は強くないけどきらきらと輝く特殊紙の中からミランダを使うことに決め、着々と細かな仕様部分を詰めていったのですが、タイトルの文字が中々うまくいかず大分苦戦しました。

本の内容の大きなテーマとして「縁」や「繋がり」があったので、そこから糸をイメージした文字が作れたら…と思いながらスケッチブックにペンで文字を書き始めたのですが、これだ!となるものが決まらずしばらくの間少し雰囲気を変えたり線の流れを変えたり試行錯誤を重ねながら文字をいくつも書き続けました。

それからある程度書いたものが溜まった段階で書いたものを見比べながら何個か候補を決めてスキャナーでパソコンに取り込み、イラレで細かいところを微調整し続け、ようやく出来上がったタイトル文字がこちらになります。

どことなく手書きの柔らかい雰囲気も残しつつ、なるべく線が細くなりすぎないように調整しました。大分悩んでしまいましたが、その分自分がイメージしていた糸のような文字を作ることができたのではないかと思います。

次に取り掛かったのはケースの白版の濃度についてでした。どのくらいの濃度であればケースに本を入れたときに中のイラストが透けるのか、そのバランスが難しく以前自分で作った白版の濃度表を参考にしながら濃度数値を決めていきました。ただやはり初版はあんまり見え過ぎてしまうのも困る、ということでイラストが重なる部分の濃度を80%にしてしまったのですが、この濃度だとあまり透け感がなかったので再版分は濃度を50%にぐっと下げて入稿しました。

これは実際に印刷するイラストの色味などでも濃度のバランスは変わってくると思うので中々ベストな濃度を見つけるのは難しいところだと思うのですが、再版分では自分が当初やりたいと思っていた下のイラストが少し透ける感じに作ることができ、また1つ白版のことについて今回の制作を通して勉強することができたのはとても良かったと思います。

そしてブックケースと露さんにいただいたイラストにそれぞれタイトル文字を配置し、完成した本のデザインがこちらになります。

露さんから送られてきたイラストを見たときにあまりにも自分の頭の中で想像していたもの通りだったのでパソコンの前で思わず小躍りしてしまったのですが、本当に毎回素敵なイラストを描いてくださりありがとうございます…!と思いながら手を合わせました。組み合わせたタイトルの方もイラストの雰囲気と合っていたので安心しました。

それから本文の方も大詰め段階に入り、ここまで緑尽くしの本にするなら本文も緑色にしたい!となったのですが、小説の本文に緑色のインクを使って大丈夫かな…と視認性の点で不安があったので試しに本番で使用したい紙に本番と同様の単色印刷をお願いしてみました。

おたクラブさんはこの時点では少部数で印刷の雰囲気を確認できるものはなかったので50枚から印刷をお願いすることができる[ペーパー印刷]を選択したのですが、今ですと[ペラ印刷]という最小10枚から印刷をお願いすることができるものがあるので、もしおたクラブさんで単色印刷をやってみたいけど実際にどんな感じで印刷されるのか知りたい!という方にはとてもおすすめです。全面箔印刷もペラ印刷のラインナップに入ってるのがすごい。

この段階でまだ本文用紙をモンテシオンにするか、少し色味が灰色のタブロにするかで迷っていたので両方の紙にグリーンの単色印刷をお願いしました。

後日無事に届いたものを確認したときに驚いたことなのですが、グリーンの発色があまりにも明るいとモンテシオンに印刷したときに目が疲れてしまうかもしれないという懸念点があったので、モンテシオンよりももう少し落ち着いた感じになりそうなタブロも候補に入れて印刷をお願いしてみたのですが、実際に印刷した現物を見てみると想像していたよりもかなり緑の色が柔らかい感じに印刷されていて驚きました。

結果、試しに印刷をしてみたことでこのぐらいの色味であればモンテシオンに印刷しても目が疲れる感じにならないということが分かったのと文字の視認性についても問題がないことが分かり、タブロは少しくすんだ感じになってしまうことが分かったので良かったです。

それからこれは今回初めて試みたことだったのですが、お話の雰囲気を更に高めたかったのと、臨場感のようなものを感じていただけたらいいなと思い、本の一部に紙のテクスチャーを配置したページをいくつか作ってみました。主にこれはお話の後半で登場する文を読むシーンで活きたらいいなと思い、やってみたことだったのですが、完成した本の中身を確認したときに同じ紙に印刷しているのにテクスチャーを乗せているページと乗せていないページでは全く別の紙に見えるのが不思議でした。もう少し何かできないかな…と考え続けて〆切の前日にやっと考えついた試みでしたが、うまくいって本当に良かったです。

そしてケースのタイトル部分に押した透明ホロ箔。あんまり細すぎると途切れてしまう可能性もあったのでそこの線のバランスとケースに光が当たったときにその部分だけきらりと光るような感じにできたら…と思い、タイトル部分に箔押し加工をしてみました。使用した箔は透明ジャングル箔なのですが、細かいホロの切り返しが細い線のタイトルにもしっかりと活きていたので現物を確認したときにこの箔にして良かった〜!と思いました。

最初、ジャングル箔にすることは決まっていたものの、シルバーの方にするか透明の方にするかで悩んでいたのですが、露さんに相談させていただいたときに透明の方が瑞々しさも出るし背景の植物の写真とも調和していいんじゃないか、とアドバイスをいただいてジャングル透明箔を使うことに決めました。露さん、その際は相談にのってくださり本当にありがとうございました…!

後は遊び紙について、お話のテーマである[縁]からこちらも糸をイメージして〔てまり〕を選びました。種類が金白、銀白、朱の3種類だったので一番本の雰囲気に合っていた銀白を選んだですが、この紙は紙全体に不規則な細い曲線が描かれているのが特徴で断裁位置によって線の流れが異なり、1つとして同じ模様にならないところが面白く、魅力的な紙です。ただ、紙そのものがとても雰囲気があるものだったため、できれば意味合いが強いお話と結びつけることができたら、とずっと考えていたので8月の本で念願が叶って嬉しかったです。

ということで8月の本の装丁振り返りは以上となります。悩める時間が多かった分、じっくりと細かい仕様のところまで考えることができたのですが、なんだかんだ8月のイベントまであっという間だったので最後はいつもの如く爆走してなんとか完成させることができました。そんな息絶え絶えの状態でしたが、自分の頭の中でずっと考えていたことや、やってみたかったことを今回もめいいっぱい詰め込むことができて楽しかったです。

それでは最後に、8月の本で作ったノベルティと本文のフォントについて書きたいと思います。

8月の本のノベルティは4ヶ所角丸加工+OKミューズパールでポストカードを作りました。OKミューズパールは前から気になっていた紙だったのですが、中々使える機会がなかったので8月の本のノベルティで使うことができて嬉しかったです。OKミューズパールは紙の表面に絵筆を叩きつけたような細かな凹凸のテクスチャーがあるのが魅力的な紙なのですが、露さんが描いてくださったイラストと組み合わせることで一層温かみが増した感じになっていたのが良かったです。イベントで実際に本を手に取ってくださった何人かの方に喜んでいただけたのも嬉しかった〜OKミューズパール、とてもおすすめです。

そして8月の本の表紙や本文で使用したフォントの詳細はこちらになります。

・表紙&ケース:タイトル英字(大)→モボ(Bold)、英字(小)→筑紫Aオールド明朝

・本文:はんなり明朝、ノンブル→しっぽり明朝

今回の本は楽しい雰囲気のお話ではなかったので使うフォントは表紙も本文も共にシンプルな感じにしてみました。その分、テクスチャーを配置したページを何箇所か入れてちょっとしたギミックのようなものを盛り込むことができたのが楽しかったです。

毎回本の装丁を考えるときは自分が使ったことがない紙や加工を1つ以上組み込むことを目標にして進めているのですが、今回も初めて挑戦することをいくつか入れて本作りに挑んだので頭を何回も抱えてしまうことが多かったものの、その分自分の中でより思い入れが深い1冊になりました。8月のお話のテーマである「縁」と本のメインカラーである「緑」を組み合わせたことでより結びつきが深い、お話のイメージに合った本が作れたのではないかと思います。

こちらは余談になるのですが、今回の本のケースに使用した写真は紫陽花の写真になるのですが、白い紫陽花の花言葉が8月の本の視点となる人物の心情にぴったりだったのでこうして1つの本として形にすることができて良かったです。

最初はばらばらだったものを少しずつつ纏め上げていく過程は楽しさがありつつもその分悩んだりすることも多々あり楽しいだけじゃない部分もたくさんあります。ですが、やっとの思いで完成した本を手に取ったときに頑張って良かった…!という喜びが勝る瞬間を知ってしまったのでその感覚をもう一度味わいたくて今もずっと本を作ることを繰り返し続けているのですが、自分が書きたいお話とやってみたい加工、そして目にした人に一番うまくお話の雰囲気を伝えるためにはどういう装丁にしたらいいのか。そのことをこれからも頭の中で考え続けながら1冊ずつ心を込めて大事に作っていけたらいいなと思います。

次は9月の本の装丁をまとめます。それでは〜!