あまりにも早すぎる季節の流れにとても驚いているのですが、先日のイベントでやっと3月から出したいと思っていた本を出すことができました。ということで今回の本の装丁の詳細はこちらになります。
『short short cake』| 138×138正方形 | 48P
【本の詳細】
▶︎表紙用紙:クーヘン
▶︎本文用紙:カーネル
▶︎遊び紙:ベール(前後)
▶︎特殊加工:ツヤプリ印刷、ミシン中綴じ製本、2色&単色刷り
▶︎印刷所:レトロ印刷様
すごくギリギリスケジュールでしたがなんとか出せてよかった……!他の方のレトロさんで発行された本を見るたびに自分もいつか絶対にレトロさんで本を作ってもらうぞ…!と思っていたのでようやく念願が叶ってとても嬉しいです。3月に表紙の試し刷りをお願いしたときのインクは期間限定のものだったので今回使用することはできなかったのですが、結果的に今回使用したインクの方が元気で明るい感じになったので良かったです。
今回の本は、最初に考えた表紙案からやりたい方向性が珍しくあまりブレなかったので最初と最後でそこまで大きく表紙のデザインが変わったりすることはなかったのですが、本文のデータ作りや何色のインクを使うかなどそれ以外の部分で悩むところが多々あったので今回もざっくりと制作過程を書いていきたいと思います。
まずは案出し。最初にスケッチブックにやりたい本のデザインや加工などを全部書き出してから実際にイラレで表紙の仮データを作るのですが、この時点で表紙はミシン綴じが映えるようになるべくシンプルなデザインにすること、短いお話を詰めた本にすること、本のサイズは正方形にすること、タイトルは短い小説のことを指す“ショートショート”という言葉と表題のお話の中に出てくる2つのショートケーキを掛け合わせたものにしようと決めていたので今回はいつもよりも悩まずに表紙のデザインを作ることができました。
次に試し刷り。今までレトロさんを利用したことがなかったのと、他の方の感想なども見て絶対にこれは試し刷りしないとアカンやつや…!となり、まず印刷見本帳などをレトロさんから取り寄せて色見本やデータの作成方法などをじっくり見た後に試し刷りをお願いしました。
レトロさんには印刷見本がたくさん載っている『あそびかたろぐ2』というものがあるのですが、収録されている見本がどれもとても可愛いのと、これだけで最終的な仕上がりがぐっと想像しやすくなるのでレトロさんで印刷を考えている方はまずこちらを購入することをおすすめします。
あと、本文データを作成しているときにとても助かった『インクカラーチャート(カードタイプ)』もとても便利なアイテムなのでおすすめです。個人的にこれがある方が手元ですぐ色を確認できるのでよりデータが作りやすいんじゃないかなと思いました。
そしてこの2つの見本帳を見ながら使用する色と紙を決めて印刷をお願いし、数日後にレトロさんから届いた試し刷りがこちらになります。
表紙の紙はショートケーキのクリーム部分をイメージして『クーヘン』という白の紙を、本文用紙は色がスポンジっぽかったのと柔らかい色味が今回の本に合いそうだな〜と思い、『カーネル』というクリーム色の紙を選びました。
表紙の色味は概ね想像していた通りな感じだったので良かったです。本文に関しては色見本を見て気になった濃紺、ラムネ、黄土、にびいろ、茶、若葉の計6色を試してみました。結果的に今回はチョコレートっぽい色味が本の雰囲気に合っていたので茶を選んだのですが、他の色も可愛かったのでまた違う機会があったら他の色でも本を作ってみたいな〜と思いました。
次にいよいよ本番データの作成になるのですが、ここの作業が自分が想像していたよりも大変で頭が何度かパンクしかけました。レトロさんは全てのページに自分でデータを面付けしなければならないことは色々な方の制作過程を拝見したりなどして知っていたことではあったのですが、自分でデータを作るまではこんなにも大変な作業だとは思っていなかったので実際に完成した本を確認するまでは自分が何ページか面付けミスしてるんじゃないか…と不安で気が気じゃなかったです。
これはページの面付け作業に入る前に一度手書きでページの順番を書き出してみたものです。これを最初に書いといて本当に良かった…!個人的にパソコンで配置データを作るよりも手で書いた方がより理解できるんじゃないかなと思います。でももし時間があったらプリンターで裏表印刷したりなどして仮本を作った方がより分かりやすいと思います。
そしてなんとかデータを入稿してから数日後、無事に完成した本がレトロさんから届きました!わ〜い!やった〜〜!!
表紙のインクは蛍光レッド&シトロンの2色を選び、その上からツヤプリ印刷というインクが落ちたりするのを防ぐ加工をしていただいたのですが、このツヤプリ特有の凹凸が苺のつぶつぶ感だったりスポンジのモコモコ感などそれぞれの素材の質感っぽさを出してくれたのでとても良かったです。
最初、限定インクで考えていた所を別のインクに変更しなくてはならなくなった時にその部分のインクを赤にするか蛍光レッドにするかでとても悩みました。ただ赤にすると大分主張が激しい感じになってしまいそうだったのと、一緒に組み合わせるシトロンよりも強く色が出てしまいそうだな…と思ったので色々考えた結果、もう一つの候補だった蛍光レッドを選んでみたのですが、色味や明るさなどシトロンと丁度いい感じにまとまってくれたので安心しました。
ミシン糸の色は外側が蛍光レッド、内側はピーコックを選んでみました。レトロさんはミシン中綴じ(のりなし)を選ぶと外側の糸と内側の糸で計2色、糸の色をそれぞれ選ぶことができるのでどの色にしようかとここでも色々と悩んだのですが、表紙で使用するメインの色と外側の糸の色はできれば合わせたい、というのと花っぽい色にできたらいいな…となんとなく考えていたのでそこから表紙で使用した色と同じ蛍光レッドにしました。内側の糸の色は丁度糸が見えるところが流のお誕生日話の最後のページだったので流をイメージした色にしてみました。
遊び紙は透け感のあるベールという紙を選んでみたのですが、想像以上にベールに印刷した紙吹雪の柄と中表紙のタイトルの重なり具合が良くて嬉しかったです。あとこちらはミントと黄のインクを使用したのですが、2つの色が重なった部分がちゃんと綺麗に混色されて黄緑になってくれてたのもとても良かったです。
章扉で使用したインクは蛍光レッドと茶になります。この2つの扉はどことなく繋がりを持たせたかったので背景と線の色を反転させてみました。一見2つの扉はそれぞれ違う色を使っているように見えるのですが、どちらも配置してある部分が逆なだけで使っている色は同じになります。線と背景、どこにどの色を配置するかでここまで違う色合いになるんだな〜ととても勉強になりました。
ほか、中表紙と奥付ページは蛍光レッド&橙、目次ページは橙&茶、ケーキ柄ページは橙、本文ページは茶を使用したりなど2色刷りと単色刷りが混ぜこぜな本になりました。
今回は挑戦できませんでしたが、次にもしレトロさんに印刷をお願いする機会があったら本文ページの2色刷りだったり、今回使用できなかった『おりひめ』という小さな色紙の破片が散りばめられている紙を使った本を作ることができたらいいなと思います。
最後に、今回の本で使用したフォントを紹介します。
・表表紙:タイトル→HGゴシックEを変形させたもの、名前部分→Myriad Variable Concept
・裏表紙:タイトル文字は上記と同じ+小さな文字は筑紫A丸ゴシック(Bold)
・目次:数字→かなたとひなた(small(E))、タイトル→かなたとひなた(手書き)
・章扉:かなたとひなた(手書き)
・本文:筑紫A丸ゴシック(Bold)、ノンブル→fontopoFONTOPO(Regular)
奥付のフォントは裏表紙と同じです。所々線を太くしたり角を丸くしたりなど加工をしてるところもありますが、概ね使用しているフォントはこんな感じになります。
3月に出したルームシェア本ではこちらと少しだけ字体が違う筑紫B丸ゴシックというフォントを本文に使ったのですが、またこのシリーズのフォントを本文に使えたらいいな〜と思っていたので今回使うことができて良かったです。
そして私事になりますが、初めて本を作り始めてから早いもので1年が経ちました。最初は🏀にハマった証を何かしら残したいという思いから始めた本作りでしたが、まさか1年後も自分が本を作り続けているとは思っていなかったので人生って本当にどんなことが起きるかわからなくて面白いな〜と日々感じています。
今回で発行した本は4冊目となりましたが、まだまだやりたいことがたくさんあるのでこれからもマイペースに楽しみながら本作りを続けられたらいいなと思います。
それでは〜!