自分の話をするのが苦手。気がつくと、うんうんと相槌を入れながら、相手の話に耳を傾けている。その隙間でぼんやりと、自分の形を見失っていく。そんなに気負う必要は、きっとないのに。
他人の話を聞くのが嫌いなわけではない。楽しそうなら嬉しいし、悩んでいるなら一緒に考える。そうすれば相手はすっきりと笑ってくれる。わたしに残った感情は誰にも話せないまま、そっと仕舞い込むのだけれど。
わたしは自分の話を始めるのが苦手で、ねえ聞いて、とまず言えない。不思議だなあと思うけれど、おそらく自分の話をできる環境に居なかった。話を聞いてくれ、受け止めてくれ、というのは、相手への期待だ。まったく違う答えが返ってきたら、話を流されたら。そんなことがよくあるからこそ、何も言えなくなった気がする。テレビの話をしていた方が、明るくて平和だ。
対等な関係がいい、と常々思っている。負担は半々に、苦手はカバーし合って、得意なことはお互い任せて。友人にも恋人にも同じことを考えるけれど、贅沢な話だろうか。