適応障害で休職して、もう3ヶ月目だ。会社の人には実家に帰りなよとたくさん言われたけれど、絶対に嫌だった。両親は休職したことをまだ知らない。言うつもりもない。
時たま夢に見る。両親がすべてを知っていて、おかえりと言ってくれる夢。わたしは安心して泣きながら縋りつく。張り詰めた糸が切れたようにホッとして、目が覚める。夢だと、知っている。
友達に会うため、久しぶりに関西に戻った。実家には帰らず、都会で遊んだ。いよいよ関西弁が出なくなっていて、アイデンティティをひとつ失った気がした。地方から出てきて、東京でがんばる女の子、だったのにね。
ちょうど母の日だった。綺麗に並んだカーネーションを見ながら、小さい頃に意気揚々と買ってきて、ベランダに放置された赤い花を思い出す。去年も今年も何も贈っていない。母の日すら祝えない、薄情なひとり娘。
大人になった。自由だと思った。どうしてこんなに虚しい。