先日、伏見ミリオン座さんで映画『PERFECT DAYS』を観てきました。
お昼の回一度だけの上映だったんですが、お客さんいっぱいでした。注目度の高さがうかがえる。
もともと母が昨年末からずっと観たいと言っていて、その後自分も興味がわいたので一緒に行ってきたんですが…なかなかいい映画でした!
大絶賛!涙!とかそういうのじゃなくて、じんわりと「いいなあ、あのシーンよかったよなあ」と余韻に浸れる映画ってなんか久しぶりな気がします。
まあ自分はそこまで本数観てるわけじゃないんですが…。
Twitterで検索するとまず最初に「清掃・漂白された東京!清貧賛美が海外ウケ狙い!」みたいな感想のnoteが一番最初に表示されてなんか悲しい。
確かにまあそういう感想があるのも分かるというか、好きか嫌いか二分される作品かもなと思いました。
リアル世界のトイレ清掃員さんはもっと過酷で余裕のない生活を送っているから虚構だっていうのはすごく真っ当な評価だと思うし、自分も少し頭によぎったのは事実。
『TOKYO TOILET』による壮大なPR映像に感動を強制させられているってのもその通りでしょう。
ただまあ…映画なので!
そんな生々しいつらさをスカした態度で2時間劇場で観たいか?って聞かれたらノーですし、そこはもう創作物なんで、と切り分けられるかが楽しめるかどうかの分かれ道なのではと思いました。
リアルな描写という点ではタカシ(演:柄本時生)のキャラクター性がよく効いててよかったですよね。前半のみの登場で、自主退場するのも含めて。
お金がなくて仕事に対するモチベも低く、生活に対する余裕のなさがすごくリアルで。
でもデラちゃん(演:吉田葵)という仲のいい子がいて、彼とのやり取りには思わずハッとさせられたし、それを見た平山さんが思い出して耳を触りながら一人で微笑むシーンは個人的にこの作品のハイライトの一つでした。
あれは10段階でいうと10くらいよかったです。
なんかもう…大した山場じゃないんだけど「このシーン良かったよね」ってふと思い出す箇所が多すぎる。
名前すらはっきり分からない人たちに常に引き込まれる。
行く先々で常連客として迎えられ、大した会話もなく店主たちと『いつもの』やり取りを交わすくらいルーティンが確立されている平山さんにも日々違った人生の”さざなみ”が訪れ、それが凪だった日も荒波だった日も最後に振り返ってみれば一つ一つ形の違うピースとして楽しめる、みたいな…。
その様子が心地よくもあり、ワクワクもする。そんな穏やかな感情の波を登場人物とともに楽しめる作品でした。
あのアナログでミニマムな生活は、足るを知るっていうやつですかね…?
でも平山さんは決して身軽な人じゃない。
自分で選択してあの生活を送っているし、所有物が少ないわけでもないので、そこら辺のバランス感覚が形作る人物像が実に見事でした。
終盤、平山さんの夜寝る場所が変わって、ダンボールなどがうず高く積んである場所のカットが初めてあったのが割と衝撃だったんです。
捨てているように見えて、執着やこだわりは人一倍捨てられない人なんだなと。
…白状すると、自分がこの映画に興味を持って観に行ってみようと思い立ったのは、1月末の”自称”桐島聡のエピソードがきっかけで。
報道から浮かび上がる桐島の人物像が「PERFECT DAYSの平山みたいだ」とTwitterで言われていたことから途端に気になり出しました。
今振り返ってみればなかなか邪悪な動機です。
で、実際映画を観て比較してみて、確かに部分部分はかなり似ているけれど背景色が根本的に違うよなというのが自分の最終的な答えでした。
凶悪…ではないにしろ、指名手配犯と同一に語るには平山さんがクリーンすぎるというか。
…まあ実際分かりませんけどね!
指名手配犯の潜伏生活がどうだったとか。
分からないからこそ、あの報道内容にみんな興味津々だったんだと思います。自分もです。
なんかあれこれ書いてたら長くなってしまいました。
それだけ”語りたくなる映画”だったと思います。いい作品である証拠だ。
気になってる人は劇場でやってるうちに観に行った方がいいよとオススメしておきます。