2024.03.25
DDDホテルの2階にそのカフェはある。
初めて行く場所、初めて歩く道。そして初めて行くカフェ、それなりの緊張感を覚えながら、ドアを開ける。
しずしずと「ここ、初めてじゃないですよ」という感じを出しながらカウンターに近づくと、店員さんがメニューを差し出して「先にお席をお取りください」と話す。おーけーおーけ、そのタイプの店ね。
わたしはぐるりと店内を見回して、角の席に荷物を置いた。人は少ない。ここなら集中して作業できそうだ。
鴨肉のサンドとカプチーノ。注文してしばらくしたらすぐ席に運ばれてくる。
朝ごはんはプロテインとみかんをひとつ。お腹が案外減っていたのでかぶりつく。こういうオシャレなお店って必ずキャロットラペが付いてくるよな、とふと思う。
わたしが馬喰町界隈で気に入って通っているカフェも、モーニングプレートにキャロットラペがついてくる。保存が楽でオシャレな味覚だからか?てか、オシャレな味覚ってなんやねん……
ここでカプチーノをすする。いや、案外美味しいじゃないの。酸味系のコーヒーが苦手なのでカプチーノにしておいてよかった、とも思う。深煎り!ネルドリップが最高!、とまでは言わないけれども、浅煎り焙煎のコーヒーは胃腸にダメージを受けやすいわたしには味が強すぎて合わない。しかし初めて訪れるカフェでは味がわからないので、コーヒー豆が浅煎り焙煎である可能性も考慮して大体カプチーノかカフェラテを頼んでいる。こうすると美味しく飲める確率が上がる。これ、みなさん真似していいですよ……。
1週間の体調の記録を紙のノートに万年筆で書いていく。まわりのお客さんはみなiPadやノートパソコンを広げている中、自分だけアナログな方法なのが少し気恥ずかしい。しかしやっぱり記録を取るのは紙がいいんや、紙が。紙だと目の前の出来事に集中できるのが気持ちいい。いつからわたしはひとつのことに集中するのが難しくなったのだろう。
店内はローファイ系の居心地の良い音楽が流れており、Shazamでいくつか曲名を検索する。プレイリストの選曲がいい。InstagramやThreadsで紹介されているとおり、雰囲気がいいカフェだ。間接照明や光の入り方もこだわっているので、内装をトータルでディレクションしている人がいる気がする。少し前にSNSで流れてきたNewJeansの宿舎みたいな場所だ、と思って画像検索したけどだいぶ雰囲気が違った。
くつろいで日記を書いていたら、30代・慶應商学部卒・コンサル勤務みたいなチャラチャラした男性ふたりが横のテーブルに座ってきた。片方の男性はそろそろ結婚するらしいが、それまでは遊びきりたい!と話しており、いままでの女性遍歴を豪語している。都内のタワマンでパーティした話、六本木のクラブでナンパした話……ローファイな音楽が流れていたカフェの雰囲気が終電後の渋谷のような、人間の欲がまみれた地獄のようになる。Tinderで出会った女との話を聞きにわたしはここに来たんじゃないよ、となり、耐えかねて席を立った。気持ちが荒ぶっていたのでレッドツェッペリンを流して、イヤホンを耳に差し込む。
予定よりも少し早いがどうしよう。
当て所もなく歩いてもどこかにたどり着けるのが東京のいいところだ。店を出て次のカフェを探すことにした。
雨がだいぶマシになってきた。今日のカフェでの出来事は面白いお土産はなしとして、家に帰ったら配偶者に話そう。気持ちを切り替えて駅へ向かった。