そのときはそのときで

はすみ
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公開:2025/3/4

 昨日は心療内科の通院をした。まずは休職期間の確認。派遣会社とのやりとりを伝えたところ、形式上復職OKにしてくれることになった。実際に働き始めるのはまだもう少し先の予定です。先生はきっと私より状況を理解していて、こういう対応も慣れているのだろうと思った。この件に限らず、とにかく話が早くて無駄がない方で助かる。

 次に薬の相談で、初診から睡眠導入剤と精神安定剤を処方されていた。休職してからは不安感で眠れないことがなくなり、前者はすでに服用をやめていた。後者は自己判断で止めていいのかわからないから飲み続けているが、いまはストレスのない環境だから必要ないように思うだけで、今後もなくても大丈夫なのかわからなかった。その旨を伝えたところ、「一旦止めてみようか。次の仕事が始まったら、そのときはそのときで考えよう」と言われた。その場凌ぎで忘れっぽくて計画性がなくて、いつも"いま"という点の上に立っている私を納得させるには充分すぎる言葉だった。

 いまのところを受診する少し前、まだ休みながらも会社に行けていたとき、一度だけ別の病院を受診した。そのときの先生は、開口一番に「診断書出しますか?」と聞いてきた。非常に困った。こんな状態になったことなくて、休むべきかわからないからあなたに判断を仰いでるんですけど?と理不尽に逆ギレしたくなった。あとになって、初手で「休むために診断書を出してほしい」と話し始める患者も少なくないのだろうと思い至った。そのときは自分の中で休職という選択肢はなかったから、薬だけ出してもらって終わった。

 その後いよいよメンタルがやばくなって、でも前の先生はいやだなあと思って病院を変えた。いまの先生のほうが私が求めているものに合致しているのだと思う。「そのときはそのときで」という言葉を聞いたとき、本当に安心した。私っていつもそう。いまこの瞬間さえよければよくて、なにか起こったら、それはそのとき考えればいい。だから仕事に行きたくなかったら躊躇いなく休む。ろくな貯金もないのに休職する。お金がないと言いながら会いたいから友人と遊び、買いたいものを買う。自制心のなさには自信がある。こんな自信いらなすぎる。

 でも"いま"が点だとして、その点を繋いだ線で完成するのが"人生"だとしたら、やりたいことをやった点をたくさん通過してる線のほうがいい。綺麗な線じゃなくていい。はちゃめちゃな軌道でも楽しく生きて死にたい。人生終わりよければすべてよしなら、生死の生のほういらないじゃん。というのは意味わかんない極論だけど。


 先日映画『ファーストキス』を観て、なおさら結果より過程というものを愛おしく思うのかもしれない。本当は映画の感想だって書きたいのに、先に自分の話をしてしまった。先に、と言うがもう別途感想を書かない気がするからここで述べてしまおう。ネタバレもする。

・坂元さんの脚本も塚原監督の演出も大好きなので、もともと楽しみにしていた。エンタメ寄りなのに繊細で、大変に面白かった。

・このタッグの主演に松たか子さんって最強の布陣すぎる。手堅い。そしてほっくん、いい仕事取ってきたね!よかったね!ってどの立場からかわからない称賛をしたくなった。

・15年前のカケルに振り向いてほしくてあれこれ試みるカンナがずっとかわいい。ほっくんと並んで余裕で画になる松たか子さん綺麗すぎ。

・カケルがずっと受けの姿勢じゃなくて、カンナが未来から来たことが判明したあと、立場が逆転するのがたまらなくいい。初めは個人的な好みとして、カケルがもっと偏屈な男でもいいのになと安易に思ってたけど、あのストレートな物言いに心打たれた。

・あらゆる台詞で「坂元さんっぽい!」と思いすぎて挙げ出したらキリがないけど、犬に囲まれたカンナに、カケルが「楽しんでますか?困ってますか?」みたいなこと聞くシーンが特に好き。そこへフリになる森七菜ちゃんとの会話で、みんなが動物好きっていう前提がおかしいみたいな台詞もよかった。私もそう思う。犬派?猫派?の質問に全人類が答えられると思わないでほしいし、動物の癒し動画で誰しもが癒されると思わないでほしい。

・どこのシーンでって言われると難しいけど、カケルの結末が変わらないことは見当がついて、だからこそカンナがこんなに何度も戻ったって意味ないじゃんって思ったけど、戻ること自体がカケルへの愛で、それが15年前のカケルに伝わるの、涙を禁じ得ない。本当に泣きました。

・随所に塚原あゆ子みを感じて、心の中で「あゆ子ー!」ってうちわ振ってた。初手の電車とベビーカーとカケルが重なる真正面からのカット、あゆ子すぎる。『ファーストキス』というタイトルにも納得。あのキスシーンやばい。あと何度目か忘れたけど、ロープウェイ乗ってるときの夕陽越しのカケルの手のアップも最高。

・この間見たちょうどBTTF見たのが、タイムトラベルの基礎編の単位取っておいてよかったー!と思った。塚原監督はああ演出するのかとわくわくした。

・タイムトラベルを視覚的に示す付箋と紐とか、集まっていくポラロイドとか、あまりにもよすぎる。どこまでが脚本の指示で、どこからが演出かわからないけれど。赤い糸を物理的に切るの痺れた。

・坂元さん、なぜあんなにも冷え切っていくパートナーを書くのが上手いのだろう。見ている間、何度か麦くんと絹ちゃんを思い出した。部屋の雰囲気もちょっと似てない?

・思い出したから、翌日すぐに『花束〜』を見た。『ファーストキス』と『花束〜』のミルフィーユ、おすすめです。『ファーストキス』が『花束〜』へのアンサーのように感じた。

・カップルと夫婦で関係は違うし、麦くんと絹ちゃんは似てるから惹かれて、カケルとカンナは似てないから惹かれて、相違点はあるんだけど。朝ごはん、カケルが米派でカンナはパン派なの、わかりやすく共通項のなさが見えてよかったな。絹ちゃんもよくパン食べてたね。

・『ファーストキス』はカンナがやり直せたから、ふたりの過程が変わって、それでたとえカケルの結末が変わらなくても、ふたりの人生変わったってことになる。『花束〜』のふたりも、あのまま結婚してたら当初のカンナとカケルみたいになったんだろうなと思う。そこへ過去に戻れたらという「もしも」を持ち込んだのが『ファーストキス』みたいな。でも「もしも」なんてない麦くんと絹ちゃんはもうあの頃には戻れないから。過程ってめちゃめちゃ大事じゃんって思った。

・私たちの生きる現実においても、「もしも」なんて起きない。人生って不可逆。カケルみたいに未来のカンナに出会わなくても、人間っていつか死ぬって、みんな知ってる。いつか、近いのか遠いのかもわからない未来に、確定で待ってる。死んでからじゃ遅いなら、生きてるうちに大事な人を大事にしなきゃいけないよね。

・とにかくほっくんのお芝居がよすぎて、『夜明けのすべて』を取り急ぎ見なければと思った。ドラマ『西園寺さん〜』を見なかったことも後悔している。

・そして坂元脚本の癖つよキャラたちの独特の会話を浴びまくりたい。『大豆田とわ子〜』がなぜか途中なので続き履修します。あと『カルテット』と『初恋の悪魔』を猛烈に見返したい。大好き。映画もいいけど群集劇のドラマ書いてくれないかな。

・坂元脚本に出てくる、現実にいたら偏屈すぎてモテないけど、理論で詰めてくる面倒くさい男って本当に最高だよね。自分が好きな俳優が演じてくれたら嬉しい。いつかその手番、寺西拓人さんに回ってくれませんか。


 以下、映画観た日(3月1日)の思い出写真。

↑ひとりで映画館行きがち芸人、「一緒に観にきたよ〜っていうあれやりたいです」とお願いして撮った。観た後すぐに人と感想を分かち合えるのは楽しい。

↑おしゃれなランチ。前菜は大皿で来て、写真は取り分ける前だけど、3人で分けても結構ボリュームあった。あおさのフリットみたいなのが一番美味しかった。居酒屋にありそうな味で舌に馴染むので(バカ舌の感想)。パスタはカルボナーラ。

↑カラオケ楽しんだあとの串カツ田中。チンチロ2回やったら2回ともメガだった。自分がお酒を飲むときの目安として、2時間で4杯くらいがちょうどご機嫌に酔う適切なペースかなというのが最近の心得。貝類が苦手なのですが牡蠣(写真右端のやつ)チャレンジ。意外といけた。