インゲームである人に見せたかった落語のネタ。機を逃してお蔵入りになってしまったので、ここで供養。
【ネロ】これでよし、と。遂に完成したぞ! 俺こそが世界最高の機工士であることを見せてやるよガーロンドォ…。とはいえ、ちゃんと動作確認しないとな。俺はこう見えても慎重なンだ。そうだ! 冒険者の野郎を呼びつけて、あいつにやらせよう。
【冒険者】何だいネロさン、さっき使いの人が来たけど、急ぎの用だって?
ハクション!
【ネロ】うわ、汚えな!
【冒険者】ごめんごめん、花粉症なんだ。今日はよく舞ってるみたいだよ。
【ネロ】鼻水ふけよ。俺はこんな奴に負けたのか…。あのときスギ花粉爆弾つくっときゃよかったな。
【冒険者】あたしの花粉症はヒノキだよ。
【ネロ】知るか! そんなことより、俺の作ったこいつをおめぇにも見せてやろうと思ってよ。「ドミネーター」という銃だ。どうだ、すげぇだろう?
【冒険者】何がすげぇんだい? 変わった形なのはわかるけど…?
【ネロ】この銃はな、標的の心理的な犯罪傾向を数値化して、それに応じて攻撃手段が変わるンだ。犯罪係数が中くらいなら、標的をマヒさせるパラライザー。これをくらって立っていられる奴はいねぇはずだ。
【冒険者】へええ、じゃあそれが高かったら?
【ネロ】そン時は、エリミネーター。標的を完全に吹っ飛ばす。跡形も残らねえくらいに。
【冒険者】ええ・・、怖いなあ。
【ネロ】大丈夫だ。犯罪係数が低ければそもそもトリガーがロックされて撃てなくなる。
【冒険者】本当かい?
【ネロ】俺はそう作ったつもりだ。だが、試さなきゃ安心できねえ。だからこいつをおめぇに試し撃ちしてもらいてえ。
【冒険者】ええ、嫌だよ。自分でやればいいじゃないか。
【ネロ】これだから素人は。自分でやったら試験になンねえンだよ。作った本人だと不具合や不便さに気づかねえからな。だから、触ったことのない他人にやってもらうンだ。
【ネロ】俺も一緒に行くから安心しろ。ほら最初はウルダハだ。テレポしろ。ほら。
【冒険者】もう、強引だなー。テレポー。
【ネロ】よし、最初の標的はあいつだ。ラウバーン。俺の見たところあいつはやばい。
【冒険者】局長が犯罪者なわけないでしょ。
【ネロ】一見そうじゃない奴が潜在犯ってこともある。そういうのを検出できなきゃ意味がねぇ。
【冒険者】まず自分を標的にしなよ・・・。それでどうすりゃいいんだい?
【ネロ】そいつを構えて狙いをつけるだけでいい。あとは自動で標的の犯罪係数を計測する。トリガーは引くなよ。牛おやじが吹っ飛んだら、大騒ぎだからな。
【冒険者】もう犯罪者に決めつけてるじゃないか・・・。構えて、狙いをつけてっと。
【ドミ】携帯型心理診断鎮圧執行システム。ドミネーター、起動しました。
【冒険者】えっ、しゃべるの? 精霊?
【ドミ】ラウバーン・アルディン。犯罪係数オーバー200、執行対象です。セーフティーを解除します。執行モード、ノンリーサル・パラライザー。落ち着いて照準を定め、対象を制圧してください。
【冒険者】あわわ、局長ってヤバイ人なの!?
【ネロ】くくく・・・。やっぱりな。俺の目に狂いはなかった。「戦はいい」とかいう奴がまともなはずがねぇ。
【冒険者】そういえば、局長があたしのことを「貴様」って呼ぶのちょっとムカついてたんだよね・・・。ズズー。
【ネロ】おい鼻水垂らすなって。情けねえ奴だな。砂漠にヒノキ生えてねえだろうが。
【冒険者】砂アレルギーかな。
【ネロ】言ってろ。次、リムサロミンサだ。テレポしろ。
【冒険者】ええ、まだやんのかい? もうわかったじゃないか。
【ネロ】1回だけじゃだめだ。少なくとも三国でやるぞ。ほら、早くテレポしろ。
【冒険者】まったく人使い荒いなー。テレポー。
【ネロ】よし、いたぞ、メルウィブ提督だ。
【冒険者】・・・。提督は海賊上がりだからやばいかもね。
【ネロ】だろ? 俺の見たところ提督の犯罪係数は相当なもンだ。見ものだぞこれは。早く狙え。
【冒険者】あんたが怖いよ。えっと、狙いをつけてっと。
【ドミ】草薙素子。犯罪係数オーバー500、執行対象です。セーフティーを解除します。執行モード、リーサル・エリミネーター。慎重に照準を定め、対象を排除して下さい。
【冒険者】あわわわ、誰だよ、クサナギモトコって?
【ネロ】俺が知るか。だが興味深い現象だ・・・後でよく調べてみる必要があるな。よし、次だ。グリダニア。テレポしろ。
【冒険者】えー、もう不具合あるってわかったじゃないか。やめようよ。
【ネロ】素人は俺の言うこときいてりゃいいンだよ。不具合はひとつじゃねえかもしれねえだろ。試験は全項目やる必要があるンだよ。
【冒険者】でもグリダニアは嫌だよ。森だろ。花粉症が…。
【ネロ】おめえそれでも英雄か? それで世界を救えるのか?
【冒険者】あんたが言うなよ。わかった、わかったよう。さっさと済ませよう! テレポー。
【ネロ】えーと、いたいた。カヌ・エ・センナだ。
【冒険者】ハックション! ハックション!
【ネロ】おめえうるせえぞ。くしゃみ何とかしろよ。
【冒険者】ズズー! あんたこそ、変な武器作ってないで、花粉症を何とかする発明とかないのかね? もしそれができたら、世界最高の機工士だって、あたしが認めるよ…。
【ネロ】がたがた言ってねえで、さっさとカヌ・エを狙え。
【冒険者】わかったよ…。これは犯罪係数0の場合の試験だな。カヌ・エ様が悪い人なわけはねえ…。狙いをつけてっと。
【ドミ】蛮神ガルーダ、三闘神ソフィア、人妻アメリアンス。犯罪係数オーバー800、執行対象です。セーフティーを解除します。執行モード、デストロイ・デコンポーザー。対象を完全排除します。ご注意ください。
【冒険者】あわわわわ。なんだい、こりゃ!?
ハ、ハ、ハ…。
【ネロ】おいおい銃口を下げろ! そのままくしゃみするんじゃねえ。カヌ・エが吹っ飛ぶだろが。そんなことになったら、森の精霊が騒いで花粉が増えるぞ。
【冒険者】花粉どころじゃねえよ! カヌ・エ様が蛮神なわけはねえだろ! しかも最後の人妻ってなんだよ!? さっきの提督といい、やっぱこれは壊れてるよ。
【ネロ】落ち着けよ、これは声じゃねえか?
【冒険者】え?
【ネロ】カヌ・エの声だよ。そういえば聞いたことあンだ。ガルーダとソフィアの声はカヌ・エにそっくりだってな。
【冒険者】カヌ・エ様の声なんてここからは聞こえないけど。
【ネロ】声が似てるってことはエーテルに似たところがあるってことだ。多分…。
【冒険者】多分って…。やっぱあんたの作るものは心配だ。
【ネロ】うるせえな。これから調べてみねえと俺にもはっきりしたことはわからねえンだよ!
【冒険者】じゃあ、さっきの人妻は?
【ネロ】知るか、どっかにカヌ・エと声が似た悪い人妻がいるンじゃないか? 家の金を勝手に使い込むとか。
【冒険者】いいかげんだなあ。
【ネロ】もう十分だ。妙な現象が見つかった。試験の成果はあったな。これから帰って徹底調査だ。くくく…。こういうのがおもしれえンだよ。
【冒険者】まだだよ。ズズー。
【ネロ】あ? 何言ってンだ? とにかく鼻かめよ。
【冒険者】まだ終わってねえ。犯罪係数が低いとトリガーロックされるんだろ? その確認ができてねえ。
【ネロ】なるほど。確かにおめえの言うとおりだな。よし、俺を狙え。
【冒険者】え? あんたなんか狙ったら粉々になるに決まってるよ。
【ネロ】馬鹿言うな。俺みてえな純粋な心の持ち主に犯罪傾向なんかあるわけねえだろ。さっさと狙えって。
【冒険者】もう、知らないよ。
【ドミ】ネロ・トル・スカエウァ。犯罪係数オーバー200、執行対象です。セーフティーを解除します。執行モード、ノンリーサル・パラライザー。落ち着いて照準を定め、対象を制圧してください。
【冒険者】ほら、言わんこっちゃない。執行対象だ。ハ、ハ、ハ、ハ…。
【ネロ】おいおいおいおい、くしゃみする前に狙いをはずせって!
【冒険者】ハ、ハ、ハ、ハ…。
【ネロ】待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て
【冒険者】ハクション!!!
【ネロ】ぎゃーーーーー!
【冒険者】あらー、ネロさン気絶しちゃった。まあこれで射撃の確認もできてよかったね。
以上です。