眠れない。夜になると鼓動が騒がしい。隣でスヤスヤと眠るパートナーを横目に。穏やかに眠れますようにという心からの願いと、自分が眠れないという現実の両方が押し寄せる。そっと目を覚さないように立ち上がる。暗い部屋へと歩み夜。真っ暗な部屋に暗い光が1つ。太鼓のは鳴り止みカタカタと音を立てる。いや、太鼓の音をかき消しているだけかもしれない。ぐるぐると回りだす頭の中に。答えはない。あることを期待しては過ぎ去っていくだけ。虫の音に希望寄せて、現実にため息を吐いた。このことにきっと意味はない。ため息の未来がドミノ倒しで自分にのしかかる。自分もドミノだったなら楽だっただろうか。人間であることを悔いてしまいそうだ。未確認生命体に取り扱い説明書はない。図鑑もない。学習なしにはAIも知らない。当たり障りないどこにでもある回答に笑った。諦めた。太陽が近づいて濃くなった影。目を細めた。後ろに伸びていく影。ダメだった。意識がスッと暗闇に溶けていく。夜だから。朝ではないから。知っている。分かっている。できてはいない。無知と等しかった。私は何を知っているのだろうか。気分が乗らないどころの騒ぎではなかった。光輝く太陽は中心温度が高いという。私は太陽ではなかった。電子レンジで温め損ねたおにぎり。闇は深くなるばかり。避けるべきだろうか。顔を出す必要性に嫌気がさした。止まらない。イコールマイナスだった。プラスにはマイナスをかけて、マイナスにはプラスをかけた。深く沈めば高く飛べるだろうか。落ちた時の痛みを想像した。虫が鳴いている。心も。分からない。分かりたくないのだろうか。分かろうとしていないのだろうか。嫌、いや、嫌。暗闇の中で電気の所在はわからなかった。どんなに近くにあろうとも。寝ぼけ眼のまどろみの中では声を上げられたかさえも定かではない。どこへ向かいたいのだろうか。なんの意味があるのだろうか。羅針盤を失った船は流されるがままに進む。命を削って進み続ける。限りある資源を失いながら。ボルテージは下がらない。期待への感謝と圧力。テーブルのものを全てはたき落としたかった。花瓶だけを載せたかった。ミニマルに美しく。愛したかった。水を熱を注ぎたかった。天板の見えないテーブルに捨てられない自分に。どうしようもなく希望がない。頑張れてもいないがんばるふり。ハリボテの希望。風。風雨。希望だらけの裏切り名人。世渡り上手。気持ちが悪い。捨ててくれ。いなくなってしまえばいいのだろうか。リセットすれば。きっとどうにかなる。知ってる。いなくたっていい。なんとかなる。無いことで生まれるものが大きな輝きをもたらせばいい。大体は代替でだいたいへん。狂った。静寂の先の車輪の音。回るものは何か。混ざり合って溶け込んだスープを飲み込んだ。嗚咽。鼓動も輝きを失う。吸って吐いた。痛みは通り過ぎてその先へ。生かされて活かされて活かされて。いきたい。を胸に。