お日記-誕生日

sushi_or_udon
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公開:2025/4/5

2025年3月14日。誕生日当日。伊豆旅行の前日。彼は一通の手紙をくれた。プロポーズだった。

わたしたちは、2年前2023年7月17日から交際を開始した。三連休最終日の海の日だった。2024年の3月から同棲を始め、5月に婚約状態となった。

「婚約した」ではなく「婚約状態になった」と言ったのは、元々結婚前提で交際をスタートさせたというのと、あとはわたしが同棲を始めたタイミングで「いつ結婚する?」と聞き、最初は周りに既婚がおらず色々言われたくないとかいうよくわからない理由から2年後に延ばそうとしてたが、大学の同期が1名結婚したことで肩の荷が降りたばたくんがわたしの希望である来年の記念日で了承したからである。最初に結婚すると目立つから後続なら問題ないという理論である。シャトルランかよ。

なので、結婚の準備は進めているもののプロポーズというものはなかった。そもそもわたしは主導権を握っていたいタイプなので、別に引っ張って欲しいと思ってないし、ましてや待ってるだけなんて嫌だ。ただ、フェアではありたい。儀式としてプロポーズをしてもらい、相互意思を明らかにして結婚に進んでいきたい。のでプロポーズをわたしの誕生日によろしく!とばたくんに頼んでいたのだ。

交際時も似たようなもんだった。わたしが電話しながら「お互いかなり好きだと思うので、会って違和感なかったら付き合ったら良くないですか?」と言って、会ったらもじもじしてるばたくんに「最初はわたしが言ったので次は君が言って」とけしかけている。

ということで迎えた当日。誕生日プレゼントである旅行を控えた前日であり、ばたくんは年末から年度末にかけてずっと繁忙期で、その大詰めみたいな時期だった。

元々サプライズとか何か下準備して他人にもてなしというか、気の利いたことをするのは一切得意じゃない上にそもそも男性がそういう仰々しいことをするのは若干否定的(わたしも)なところがあるので、踏まえて何をするんだろうな…とちょっと楽しみにしていた。

当日夜なんとか仕事を終わらせたばたくんと近所のお蕎麦屋さんでご飯を食べて(これがかなりのヒットだったのでまた行きたい)、家に帰ってきてゆっくりしていた。

何もないな…忙しかったしな…普段ならこのまま何もなかったら絶対ブチギレるけど、なぜか今日はまあ最悪忘れててもいいかなって気持ちになっている…繁忙期の彼が可哀想で見てられなかったからっていうのと、ここで忘れてたらちょっと面白いと思ってるからかな…

そんなこと思いつつぼんやりしてると、一緒にソファ座ってた彼が肩を叩いた。

あまりにぼんやりしてたせいで、そのときに取りに行ったのかもう手に持ってたのかよく覚えていないが、付き合った日と同じようにもじもじした彼がそっと手紙を差し出してきた。

何よりびっくりした。なぜなら彼が手紙を書くことが苦手だと知っていたからだ。

わたしは手紙を書くのも貰うのも好きなので、付き合って1年目とか手紙を作って渡したりしてて、ばたくんからも欲しいな〜とか言ってみては渋い顔をされてたりしてた。苦手なことを強要することもないか…と思いそのままばたくんに手紙を要求するようなことは無くなっていたわけだが。

そんな今、彼が書いた手紙が目の前にある。じっ、と手が熱くなる。顔を見れなくて手紙に目線を落としたまま受け取って開く。

手紙の内容は彼がわたしにだけ読んでほしいと思って書いたものなので凡そ割愛するが、所謂プロポーズ然とした「一生側にいてほしい」とか「俺が絶対幸せにする」みたいな内容ではなく「自分は幸せそうな君の笑顔を見てると幸せになるので、一緒に幸せでいれるようにいましょう」みたいな内容だった。

どっちかがどうしてあげるとかじゃなく、2人の幸福とはそれそのものであり、それを守っていきたいとする彼の手紙は、あまりにも彼すぎてちょっと面白くて、愛しくて、わたしは泣いた。

まだつけていない結婚指輪を互いに嵌めて、手を並べてにこにこしていた。

翌日の伊豆旅行は雨と強風で、せっかく部屋に檜風呂がついていたけどめちゃくちゃ雨に降られながら一緒に入ることになった。

豪華な朝夕付きのプランを予約してくれていたのだが想像より遥かに量が多かった。お互いはち切れるまで食べた。食べ終わるともう他の部屋の人たちはいなくなっており、卓上を見ると全部平らげてるのもわたしたちだけだった。

初めて行ったバナナワニ園はすごくいいところだった。大学時代からCreepyNutsが好きなので、レッサーパンダぐらいしか見どころがないと思い込んでいたが、植物園だけで1時間以上経つぐらい魅力的な場所だと知った。

熱海は思ったより他人が多かったので、すぐ東海道線のグリーン車に飛び乗り、鯵の唐揚げとたこの練り物の棒みたいなのを食べながら帰った。

家に帰ったら、より良い机になった。20代は残り1年である。