卒業式の思い出

sushiyama
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中学3年生、卒業式の日、クラスで最後の合唱のとき、みんなの前で僕は一心不乱に指揮をとっていた。そして周囲がドン引きするくらい号泣していた。「お前そんなに学生生活に思い入れあったの?」と思われていたに違いない。もちろん思い入れなどない。さっさと卒業して誰も自分のことを知らない高校生活を送り、本当の青春を手に入れたかった。ではなぜ号泣していたかというと、10日くらい前に初めてできた彼女に昨日振られたからだ。井戸の底で生活してるんじゃないかくらい暗い学生生活のラスト、井戸の真上に一瞬だけ差し込む太陽の光のような9日間だった。

そもそもスクールカーストの底辺の自分が、合唱のときになぜ指揮をとっていたかというと、音楽班の班長だったからだ。中学3年の3学期の初め、どうせあと3ヶ月しかないし、受験もあるしほぼ学校での活動はない。ちょっとの好奇心で班長でもやってみるかと立候補した。それまで班長、リーダー、主役、あらゆる行事ごとから自分が先頭を立つことを避けてきた。あとたった3ヶ月という期間は、今だったらなんかやってみるかという気持ちにさせた。

みんなの前で話す三分間スピーチという時間があった。話すことがなくて、当時流行っていたモンゴル800の小さな恋のうたをなぜかアカペラで歌った。最初の1音目で盛大に音を外し、以後音を外し続けて、人生で1番長い地獄の3分間となった。いらぬ挑戦ばかりした3ヶ月だった。

中学3年になると急に行きたい高校を考えておけみたいなことを言われて、本当に困った。みんなはどうやって決めていたのかは知らないが、やりたいこともなく、行きたい高校というのがなかった、周りは急に受験に適応し始めていて怖かった。高校に対して何の興味もなかった僕は、担任に勧められるまま、紹介された高校に見学に行き、私立の割にはガラの悪い先輩ばかりがいる校風に、ここなら高校デビューできるかもしれないと思い、第一志望にした。5教科の通知表は塾に行っていたおかげでよく、内申点が良かったので指定校推薦で受けた高校に受かり、無事進路は決まった。面接では「陸上部に入りたいです!」とハキハキと話したが「陸上部の先生怖いけど大丈夫?」と笑いながら言われたことを思い出し、入学後に陸上部に入部することはなかった。

脱線した。卒業式を10日後に控えたある日、なんでかは忘れたが、Yさんという女の子とメールをしていた。卒業式前の感情の高ぶりなのか、夕方から始めたメールは朝まで続いた。夜中の3時くらいにYさんから「sushiyamaくんってまだウチのこと好きなの?」とメールがきた。この「まだ」というのは中学2年2年生のクリスマス前に一度Yさんに告白したことがあったから出てきた言葉だ。どう返信しようか迷ったが、3学期の自分は挑戦心に溢れていたので、まだ想いがある旨を思い切って送ると、

「でもsushiyamaくんってさ、*******?」

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ここから先は少しだけ大人な内容になるため、見る覚悟がある方のみ、閲覧してください。noteの有料版に続きを書いています。要約すると付き合ったということと、その間にあった色々を書いた。

https://note.com/sushiyama/n/n754df149524f

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そんなこともありつつも、付き合っている間はほぼメールだけのやりとりという日々を過ごしたが、自分はといえばマリオがスターを取ったような気分で、卒業前で1日クラス対抗のバスケがあった日もノリに乗った俺は同級生の不良を挑発しまくっていた。試合終了後、ガラの悪い同級生は顔を真っ赤にしながら怒っていたが、鼻で笑っていた。

そして9日目の日曜日、急に事件は起きる。「別れてほしい」とメールがきたのだ。気が動転しながら理由を聞くと、土日でクラスの男女で卒業旅行にいっていて、もちろん自分は呼ばれていないクラスのイケてる人達のみが行く旅行だ、そこで秘密を話す流れになり実は付き合っていると打ち明けたところ旅行メンバーに「なんで!?絶対やめたほうがいい」と言われ、「よく考えたらそんなに好きじゃないかも」と思ってしまったとのこと。もし俺に力があったら卒業旅行なんていうクソみたいな慣習を世界中から消してしまいたい、よく考えたら、高校卒業のときも浪人が決まっていたから卒業旅行なかったし、大学のときも就職浪人したから卒業旅行なかったし、人生で一回も卒業旅行に行ったことがない。進路が決まったら家に籠もれ。状況を変えられる術は全く無かった。携帯電話の前で泣きながらアドレス帳を削除した。そして次の日の卒業式に戻る。卒業式が終わった後の記憶はほぼない。

高校が始まるまでの間、よくわからない掲示板に失恋の悲しみを書き綴っては、知らん人から励まされていた。今のXでは見られない光景だろう。TSUTAYAでGOING STEADYの童貞ソー・ヤングと青春時代を借りて、これは俺の歌だと思った。部屋で一心不乱に1人で指揮をとった。もう少しで桜が咲く。卒業した皆様おめでとうございます。