すきな文の人が書いている本を読んだ。読み終わって、額に本を押し付けて息を吸っても、紙のにおいしかしなかった。それでいいのだけれど、この文をかくひとのにおいはそのひとの元に残っているべきだと思うのだけれど、やっぱりすこしずるいと思った。違う匂いをしていてくれたらよかったのに。この文を読めてよかったってきもちがもっと鮮烈に残ればいいのに。
はじめて、「かなわないくらい文がうまいな」と思ったときは、「こんなに好きな文章が自分が関与しなくても書かれるなら、生きている意味がない」って思った。わたしにとって、わたしが生きている意味というのは自分の好きな文章を書いてくれることだけだったから。それが他の人によって満たされ得るのなら、わたし自身が生きている必要はないと思ってしまった。死んだら文章が読めないのだから、矛盾しているのはわかっているけれど。数日死にたいままで日々を過ごしていた。そのあとも何度も何度も、読んだ後に死んでしまおうって思うような文章には出会ったけれど、だんだん慣れてきて、くやしいな〜!うらやましいな〜!って、爽やかな気持ちに変わってきている。健全だ。
もっとたくさん書かなくちゃ。自分のために、自分の好きな文章で自分の読みたい話を書くために。ずっと自分の文章を好きでいるために、自分の人生に胸を張れるように。たくさん書きたいな。